映画だ〜い好き        文は福原まゆみ


尾形映画プロデューサーの友人が仕切る映画制作会社で働く映画好き女史が
エッセーを連載してくれてます。
映画女史、強いヒロインは大好きのようです。




【ワンダーウーマン1984】


昔、『地上最強の美女バイオニック・ジェミー』というテレビドラマがあった。事

故で瀕死の重傷を負ったジェミーが、バイオニック移植手術により救命され、正義

のために活躍するというもの。とても強く美しく素敵なお姉さんだった。吹き替え

の田島令子さんの声も素晴らしく、大人になったらジェミーか田島令子になろうと

決めた。が、願い叶わず…悲しく今に至る。シリーズが終わり、次に始まったのが

『チャーリーズエンジェル』、そしてリンダ・カーター版『ワンダーウーマン』だ

ったように記憶している。


さて、今回の『ワンダーウーマン1984』。オープニングから息を呑むアクションの

連続。しかもやるのは幼少時のダイアナだ。彼女がある罪を犯してしまうところか

ら映画は始まる。


成長したダイアナは、スミソニアン博物館で働く美しきエリートに。ある日、博物

館に不思議な水晶が持ち込まれ、手にした者の願いが次々と叶っていく。片っ端か

ら人類の願いが叶えられると…。大混乱に陥った世界を守ろうとするワンダーウー

マンなのだが、彼女も一つの願いを掛けていた。


実は本作、あまり評判が良くない。確かに長いしストーリーに納得いかない部分も

あった。しかし、人間の原罪にも繋がる深いテーマ、無限欲のアレゴリーに引きず

り込まれてしまう。「何かが叶うと何かが犠牲になる」とは、有名な猿の三本指の

寓話から出て来た言葉だ。闇のパワーを持つ水晶がモチーフとなり、人間の欲をか

き乱していく。しかもそれは子どもにさえも宿っているという容赦ない突きつけだ。

女性作家ならではの厳しさを感じた。

ダイアナは、ワンダーウーマンとして悪と戦い人々を救おうとするが、悲しい別れ

を、予めそうなるとわかっていた辛い別れを経験する。その別れのシーンは特筆に

値するものだった。辛さを吹っ切る様に、ダイアナは走る走る。どんどん速くなっ

ていく姿に心を突かれる。走るという動きがこんなにも深い芝居になっているのは

『ロッキー』以来だろうか(いや、他にもあったな)。ダイアナの武器は腰にぶら下

げたロープだ。空を飛ぶ際もロープを投げて空に向かっていたのだが、彼女は次第

にロープなしでも空を飛べるようになっていく。より強くなっていくのだ。突き出

された左手の握りこぶしがスーパーマンと重なり、なんとも嬉しくなった。


『ワンダーウーマン1984』
2020年/ 151分/アメリカ
監督 パティ・ジェンキンス
脚本 ジェフ・ジョンズ、デヴィッド・キャラハム
撮影 マシュー・ジェンセン
音楽 ハンス・ジマー
出演 ガル・ギャドット、クリス・パインねクリステン・ウィグ、リンダ・カーターがちょこっと


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