映画だ〜い好き        文は福原まゆみ


尾形映画プロデューサーの友人が仕切る映画制作会社で働く映画好き女史が
エッセーを連載してくれてます。
映画女史、映画音楽のトリビアを楽しんでます。




映画音楽ドキュメンタリー『すばらしき映画音楽たち』


映画の草創期には音声は無かった。けれども音楽が無かったわけではない。1895年、

リュミエール兄弟の時代から、映画の上映と共に劇場では音楽が演奏されていた。サ

イレント映画にオルガンなどで生演奏が付いていたのは知っていたけど、その理由が

映写機のカタカタいう音を消すためだったとは、この映画を観るまで知らなかった。

私は大好きだけどなぁ、あのカタカタ。


1933年の『キングコング』で、初めて映画にオーケストラが取り入れられた。これ

により、安っぽかった巨大ゴリラ映画の雰囲気が一変。音楽の力の凄さを見せつけら

れるが、それをやってのけたのはマックス・スタイナーだった。『トップ・ハット』、

『風と共に去りぬ』、『カサブランカ』などの作曲家だ。


アルフレッド・ニューマンは『荒野の決闘』、『ショウほど素敵な商売はない』、

『王様と私』など、私の大好きな名作を山ほど残しているが、もう何千回聞いたかわ

からない20世紀FOXのファンファーレもこの人だったのか…なんだか嬉しくなってし

まう。


『未知との遭遇』の5音のモチーフはよく知られていると言うか、この映画を観た人

は全員覚えているだろう。それほど耳に残る音だった。映画の中ではモチーフとなる

音を使いこなすことで物事の関連性が見えてくるとのこと。『未知との遭遇』などは

その点でも大いに楽しめたなぁ。実はモチーフを最大限利用したのがベートーベンだ

ったらしい。ここでクラシックが出てくるのも面白いトリビアだ。


ハンス・ジマーは今最も有名な映画音楽家と言えるだろうが、そんな大御所でも仕事

の依頼を受けた後で不安に襲われ、恐怖心と戦うと言っていた。曲を聴かせると言う

ことは、自分を全て曝け出し、重い責任を背負うことだから、死ぬほど悩み苦しむの

だそうだ。あの大御所が!


60年代になるとフォークなどシンプルなものにトレンドが移り、70年代、『スター

ウォーズ』でジョン・ウィリアムズによりオーケストラが再発見される。誰が言って

いたか失念したが、ジョン・ウィリアムズの曲はリズムだけでどの曲かわかるとか。

やってみたら確かにそうだ。わかるわかる。迫力があってキャッチ―なのはテーマ曲

の前半だけ。後半には必ず美しいBパートが流れる。観る者(聴く者)は、この前半に

見事キャッチされるのだ。


…と、様々なトリビアが満載の本作。映画音楽の歴史をおさらいするには持って来い

の一本だ。




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