映画だ〜い好き 文は福原まゆみ
尾形映画プロデューサーの友人が仕切る映画制作会社で働く映画好き女史が
エッセーを連載してくれてます。
映画女史、もはやふつうの人じゃなくなってます。
【職業病みたい】
たかだか20年ちょっとのキャリアではあるけれど、自分にも映画関係者ならではのク
セがあるのだなぁと気付く。中には職業病と言って良いものもある。それに気づいた
時は困るやら可笑しいやら…。
デジタル撮影が主流になって久しい今でも映画を表す時の記号として、よくフィルム
が使用される。使われているのがフィルムの写真なら実物を映しているのだから大丈
夫だけど、問題はイラストの場合だ。ついついパーフォレーションと呼ばれるフィル
ムを引っ掛けて送り出す穴の数を数えてしまうのだ。ひとコマに4つだと「よしよし
OK」と落ち着く。5つだとまるでボタンを掛け違えたように気持ち悪い。これは本当
に職業病だろう。
また、あるビジネス・セミナーに参加した時のこと。その日はうっかり名刺を忘れ、
受付で芳名帳に住所と名前を書くよう求められた。後ろに行列ができており、急がな
ければならない。勢いよくサササーッと書いたはいいが、私の住所は長いので、スペ
ースが足りなくなってしまった。その時だ。咄嗟に私の口から出た言葉が「しまった、
フレーミングを間違えた!」。周りの人には何のことやら全く分からず、私はすっかり
ヘンなおばちゃんに。恥ずかしくなって、ひとり心の中で「シネスコなら良かったの
に」とつぶやいた。
面白いのはミスタードーナツの前を通る時だ。決まって頭の中で再生されるのは「♪
ド〜はドーナツのド〜…」。言わずと知れた「サウンド・オブ・ミュージック」から
ドレミの歌だ。ミスタードーナツのテーマ曲など浮かんでこない。ミスター・ドーナ
ツさん、ごめんなさい。
雨が降れば「雨音はショパンの調べ」(古いか)ではなく「♪I’m singing in the rain
〜」。「雨に唄えば」でDancing in the rainしたくなる。
何か勝負に出る時は…多くの人がそうであろうが、「ロッキーV」からサバイバーの
「アイ・オブ・ザ・タイガー」が脳の中で自動再生。実は今、これを書きながら大音
響で鳴り響いている。
高い所からの着地は両足と片手の三点着地。スパイダーマンか! ここまでくると職業
病じゃなくて単なるビョ〜キだ。