●連載
虚言・実言         文は一葉もどき


横浜が縄張りの元タウン誌ライター。
貧しさにもめげず言の葉を探求し、人呼んで“濱の一葉”。
ウソ半分、ホント半分の身辺雑記を綴ります。
もどきさんの人生での辛い局面に、助け舟もあった。



シリーズ 一人暮らしになった(4)

葬式に寄せる思い


人生の重大儀式といえば結婚式と葬式。幸と不幸、対極にあるもので、比較はでき

ないのだけれど、臨むときの気持ちは当然葬式の方が複雑で重い。

ココ通の田島氏は言う。「変に聞こえるかもしれませんが、私は結婚式より葬式の

方が好きかもしれません」と。

私はこのたびの夫の葬儀でその気持ちがよくわかる。

葬式には同情や気遣いや寄り添いといったさまざまなやさしさが満ち溢れている。

そして、目の前で執り行われている葬儀の故人の一生に想いをはせ、やがて自分の

場合に置き換えたりして、気持ちが内省的になるのだ。

人の心根に深く響くのが葬式なのである。


急な葬式が終わって、訃報を知った人からぽつりぽつりと後からお花が届けられ、

さらにお悔やみの言葉が届いたりした。

そんなとき送ってくれた人の気遣いがひしひしと胸に迫ってくる。お花に囲まれた

夫の遺影も嬉しそうだ。


  振って消すマッチの匂い供え菊


ある友人は、大変なときなので、遠慮してそっとしておこう、邪魔しないでおこう

と思った、と言うのだが、それは違う。大変なとき、心細いとき、寂しいときこそ、

自分を忘れないでくれる誰かがいることはとても心強く、励まされるものだ。

人に寄り添うのは難しいことだが、気持ちがあったら、言葉や行動にうつさないと

伝わらない。

私は人のやさしさに助けられて少しづつ一人暮らしに慣れていった。


  忌み明けや椿の花の赤きこと


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