映画だ〜い好き        文は福原まゆみ


尾形映画プロデューサーの友人が仕切る映画制作会社で働く映画好き女史が
エッセーを連載してくれてます。
映画女史、世間の批評とは組みしないようです。




『キャッツ』の評価はなぜ低い?


舞台版『キャッツ』を初めて観たのは、20年近く前だった。ニューヨークだったかロン

ドンだったかもう忘れてしまったが、被りモノのミュージカルみたいで、正直のめり込

むことはなかった。『オペラ座の怪人』や『レ・ミゼラブル』、『42番街』などはCD

を買って毎日聴いていたのに。それでも映画版『キャッツ』を観ようと思ったのは、監

督がトム・フーバーだったから。『英国王のスピーチ』、『レ・ミゼラブル』は何度観

たことか。


実際に観てみると、前評判が良くなかったにも拘らず、私は舞台版より気に入った。私

と世間とのこのギャップは何だろう。世間のネガティブ評価はこんな感じだ。


@コスチュームがリアルで気持ち悪くポルノみたい。→これは主に海外での評価で、実

は日本公開前にビジュアル・エフェクトに手を加えたらしく、日本で公開されたのは改

善版だとか。そのせいか、若しくは既に舞台版で免疫ができていたからか、私はさほど

の嫌悪感を持たなかった。

Aストーリーが無くてつまらない。→そう思えたかもしれないけど、ストーリーはある。

猫の世界で年に一度の舞踏会が開かれ、そこで選出された一匹の猫のみが天に上り新し

い人生を始められる。極単純で面白みのない、ありがちな話ではある。

Bカットが目まぐるしく変わり、アップが多くてダンスをじっくり見られない。→確か

に。でも引きの画で観たいと思うところはちゃんと引いてくれていたし、表情を見たい

ところでアップになっていた。実は主役の猫を演じたフランチェスカ・ヘイワードにと

ても透明感があり、ずっと観ていたくなるような雰囲気なのだ。しかも英国ロイヤルバ

レエ団のダンサーだけあって、踊りが美しい。


トム・フーパーはミュージカルの研究をかなりしたのか、アニメと実写含めて、往年の

傑作の影響がいろんな場面で見てとれた。バスビー・バークレー風の万華鏡の様な場面

が出てきた時、ミュージカル好きとしては嬉しくて嬉しくて、誰が何と言おうと、私は

この作品を擁護しようと決心した。


『キャッツ』
監督/トム・フーバー
脚本/リー・ホール、トム・フーバー
音楽/アンドリュー・ロイド・ウェーバー
出演/フランチェスカ・ヘイワード、ジェームズ・コーデン、ジュディ・デンチ、イアン・マッケラン、
  テイラー・スウィフト、ジェニファー・ハドソン
2019年/イギリス・アメリカ/カラー/109分

13年/カラー/137分




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