映画だ〜い好き        文は福原まゆみ


尾形映画プロデューサーの友人が仕切る映画制作会社で働く映画好き女史が
エッセーを連載してくれてます。
映画女史から、映画祭でのトークをご紹介。




【第33回東京国際映画祭 クロージング】


東京国際映画祭が始まったかと思うと、時がすっ飛び、もうクロージングを迎える。


今年は国際交流基金アジアセンターと東京国際映画祭のコラボ企画「アジア交流ラウ

ンジ」が新たに加わり、アジアと日本の映画人らがトークを行なった。全8回のトー

クは若手から大御所まで、国も世代もバラエティ豊かな人選が魅力だった。是枝裕和、

キム・ボラ、ツァイ・ミンリャン、片桐はいり、行定勲、橋本愛…。タイからはアビ

チャッポン・ウィーラセタクン監督が参加したが、お名前があまりに複雑で言いにく

い。ご本人も自覚しているようで、何とジョさんと呼ぶことになった。そこまで簡単

にしなくても…、と思ったが、やはりアビチャッポンもウィーラセタクンも無理!日

本人だと海音寺潮五郎レベルだ (笑)。


最終日はカンボジアのリティ・パン監督と吉田喜重監督。リティ・パン監督はフラン

ス語を話しておられ、カンボジアがかつてフランス領だったことを思い出す。背後に

は沢山の書物がきちんと書棚に収まっている。もしこれがポルポト政権時代なら、こ

んなに本を読む人物は殺害されるだろう。何しろ眼鏡をかけているだけでインテリと

思われ、危険人物として処刑されていたのだから。

「生き残った者が経験を伝えなければ何の役に立つでしょう。苦しい事を乗り越えて

心を開放しなければなりません。そのために映画を作ります」


正確ではないけれど、そんなことを仰っていたと思う。旧作『消えた画 クメール・

ルージュの真実』は、クメール・ルージュに家族を奪われ、過去の記録も未来予想図

も失われてしまった監督が、土人形を作って過去を再現し、さらに本来あったであろ

う未来をファンタジックに描いたもの。こうして記録を残し、心を開放していくのだ

ろう。悲しくも素晴らしい作品だった。




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