●連載
虚言・実言 文は一葉もどき
横浜が縄張りの元タウン誌ライター。
貧しさにもめげず言の葉を探求し、人呼んで“濱の一葉”。
ウソ半分、ホント半分の身辺雑記を綴ります。
もどきさんが今よりも若かった時のコスチューム。
ヒョウ柄を着たとき
巣ごもりを心がけるこの時期、ご多分に漏れず私も片付けものに精を出している。
流行に遅れた服はその都度こまめに捨てていたのだが、先日、箪笥の底に捨て損ね
たヒョウ柄の服を見つけた。
今では考えられないのだが、私はリポーターをしていたとき、インナーやスカーフ
などにヒョウ柄を身につけていたことがあった。
ヒョウ柄の服といえば、「大阪のおばちゃん」というイメージがあるが、私はれっ
きとした東京生まれの東京育ちの横浜暮らしの「横浜のおばちゃん」だった。
なぜ、当時こんな派手な服をきていたのだろう。
人は、いや、女は、流行やそのときの気分で服を選ぶ。
今思えば、私は目立ちたかったのと強く見せたかったのだろう。
その頃は、女性の社会進出は進んだとはいえ、周りをみれば、専業主婦が圧倒的に
多く、外で働いても男と対等にというわけではなかった。
会社から渡された私の名刺は、女性を象徴するような角が丸い一回り小さい名刺だ
った。
リポーターは営業の人が取ってきたスポンサーとなる会社を訪問し、会社を宣伝す
る広告文を書く。だが、記事型広告なので、露骨な宣伝ではなく、記事としても読
ませる文に仕上げるために、相手の手中にはまらずに、アゲアゲ調ばかりでなくト
ーンを下げ、さも取材してこちらに主導権があるかのごとく、文章をまとめなけれ
ばならない。
私はかなり武装していた。つまりヒョウ柄は、クライアントと戦闘態勢に入るため
の私の戦闘服だったのだ。
ふいに出てきたヒョウ柄の服をしみじみ眺めながら、今の私は、若き日の私に、そ
んなに突っ張ることはないんだよ、そんなのなんの力にもならないんだよ、と言っ
てあげたい。