映画だ〜い好き        文は福原まゆみ


尾形映画プロデューサーの友人が仕切る映画制作会社で働く映画好き女史が
エッセーを連載してくれてます。
映画女史、超絶ヒット中のアニメをクールに鑑賞してたんですが…。




『鬼滅の刃 無限列車編』


コロナ禍にあって映画業界が低迷する中、ひとり勝ちと言っても良いであろう快進撃を

続けているのが『鬼滅の刃 無限列車編』だ。週間少年ジャンプに掲載されていたマン

ガが原作で、既にTVアニメ化されている。この度、さらに劇場版アニメとして公開され

た。いつもは先入観を持たずに鑑賞するのだけど、今回は思い立ってTVアニメの第一話

だけ見ておいた。


主人公は6人兄弟の長男・竈炭治郎で、鬼による一家惨殺に加え、唯一生き残った妹が

鬼と化していたと言う設定。この妹を人間に戻すため、悪と戦う炭治郎の物語だった。

劇場版はこの設定が良くわからないまま話が進んでいたため、一話を見ておいたのは正

解だったかもしれない。


時は大正、主な舞台は無限列車。何十人もの人々が行方不明になっているこの列車に、

鬼殺隊の炭治郎とその仲間たちが送られ、同じく鬼殺隊の柱と呼ばれる最強の剣士・杏

寿郎と共に鬼と戦う。


世の話題をかっさらう大ヒット作ゆえ、その秘訣を知りたいと思っていたが、始まるや

否や、失望感に襲われてしまった。手間を省き製作費を下げたかのような、連続性に欠

ける画、味気の無い線、取って付けた様なギャグの挿絵…。一瞬、「私でも描けるかも」

と思ってしまった(実際には無理!)。話が進み戦闘場面が激化してくると、好きな人には

血沸き肉躍る描写の連続。凄い熱量は認める…が、残念な点が3つあった。一つ目は、

戦闘場面に悉く既視感があったこと。二つ目は、延々と続くアクションが、芝居になっ

ていない事。三つ目は、あらゆる事をセリフで説明していること。これならラジオで朗

読活劇をやればいい。心の中でそんなことを思いながら迎えた終盤だった。

ところが、だ。ここに来て迂闊にも心の隙間を突かれてしまった。定番の母の愛と自ら

の死を受け入れる剣士・杏寿郎の使命感だ。ダブルパンチにやられて、涙腺が緩む。結

局のところ、終わり良ければ総て良しってことで、原作マンガも読んでみよう。


【鬼滅の刃 無限列車編】
2020年/117分/カラー/PG12
監督 外崎春雄
脚本 ufotable
原作 吾峠呼世春
音楽 梶浦由記 
主題歌 LiSA
出演 花江夏樹、鬼頭明里、日野聡


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