映画だ〜い好き        文は福原まゆみ


尾形映画プロデューサーの友人が仕切る映画制作会社で働く映画好き女史が
エッセーを連載してくれてます。
映画女史、禍転じて福となしたようです。




【久しぶりに観客となる】


先日、東京国際映画祭のラインナップ発表記者会見が開かれ、同時に巷の映画館では、

映画祭の予告編が流れ始めた。ここまでくるといよいよだ。気持ちの高揚が抑えられ

ない。今年、コロナの影響で私のTIFFでの仕事はなくなった。にも拘らずワクワクし

ているのには訳がある。


映画を観られるのだ!


毎年映画祭の準備をし、事前にラインナップの説明会があって、各作品に対する期待

値がMAXになる。その状態で本番を迎える。ところが、期間中は映画を観ていただ

く側で働いているため、観客にはなれないし、そんな時間もない。垂涎のラインナッ

プを泣く泣く見送るしかない。私などが映画を観られるのは、実は映画祭が終わった

後だ。しかも配給が付いて一般の劇場公開が決まった作品のみだから、中には配給が

付かず、日本で二度と観られなくなる作品も少なからずある(涙!)。「海外へ行って観

ればいいじゃん」と、映画にさほど関心のない身内の者が言う。「じゃん」って…。

気付かないのか!海外版には日本語字幕が付いていないのだぞ!アゼルバイジャン語や

カザフスタン語(カザフ語か)のセリフをどうやって理解しろと言うのだ!

素晴らしい貴重な映画の数々を日本語字幕付きで、しかも大きなスクリーンで観られ

るのだから、映画際ってありがたい。


な〜んてことを書いておきながら、実のところ個人的にかなり嬉しいのは、日本映画

クラシックスの山中貞雄特集だ。現存する3本(『丹下左膳 百万両の壺』、『河内山宋

俊』、『人情紙風船』)どれも素晴らしい作品ばかりで、全て観てはいるが、この度の

4Kリマスター版スクリーン上映は見逃せない。


ちなみに映画祭終了前日の11月8日は、山中貞雄の誕生日。不世出の天才と言われ、

28歳で亡くなった監督の遺言はこう締めくくられている。


…最後に、先輩友人諸氏に一言

よい映画をこさえて下さい。


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