映画だ〜い好き        文は福原まゆみ


尾形映画プロデューサーの友人が仕切る映画制作会社で働く映画好き女史が
エッセーを連載してくれてます。
映画女史を泣かすにはあるなにかが必要なようです。




私的泣く映画


私は映画を観て泣くことがあまりない。映画を観る時は殆ど一人だから、同行者の目を

意識して涙を堪えるという事もない。感性が鈍いのか、心が冷たいのか、若しくは両方

か?そこで個人的に泣ける映画を考えてみた。

面白いもので、思いつくのは誰もが号泣する感動大作ではなく、映画自体はB級でも泣

けるシーンのある映画だ。傾向として、傷ついた主人公がフレッド・アステアの映画を

観る場面があれば、必ず涙腺が緩む。「えっ、これで泣く?」と言われそう。フレッド

・アステア作品は、あまりにも話がおバカで、非現実的なものが多いが、基本はラブス

トーリーだから、優しく愛に満ちている。その癒し効果が爆発的に発揮されるのは、ど

うも他作品への引用時のようだ。主人公の状況が悲惨であれば癒し効果が倍増する。そ

んな気がしてならない。

逆に誰もが号泣するのに一滴も涙が出なかったのは何か。

真っ先に浮かんだのが『タイタニック』だった。スペクタクルものとしては凄いと思う

し、私などには理解できない技術を使っているのだろうとは思うが、恋愛ものとしては

難があり、一滴も涙が出なかった。まず出会いのシーン。ジャックがローズに一目ぼれ

する設定だったと理解しているが(少なくともアンチでは入らない導入パターン)、ロー

ズの登場シーンが美しくない! あれでは一目ぼれは成立しない。しかも17歳のローズを

演じたケイト・ウィンスレットが、悲しいかな30ぐらいに見えてしまう。しかもゴツイ。

どうもこの女性像は、キャメロン監督の好みらしいのだが…。ゼフィレッリ監督作品

『ロミオとジュリエット』でのオリビア・ハッセ―の登場シーンは息をのむ美しさだっ

た。そんなものを期待してはいけなかったのか。ただし、後のシーンで大水が襲ってく

る中、ローズの方がジャックを怪力で助ける場面があり、それには笑ってしまうほど納

得した。

そしてラスト、ジャックがローズを助けようとするのだけど、あのローズなら木の板に

なんか乗らなくても生き延びたのでは?と、不謹慎にも思ってしまった。こんなそんな

で泣けなかったなぁ。


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