●連載
虚言・実言         文は一葉もどき


横浜が縄張りの元タウン誌ライター。
貧しさにもめげず言の葉を探求し、人呼んで“濱の一葉”。
ウソ半分、ホント半分の身辺雑記を綴ります。
もどきさん、息子さんの心を思いやってます。



シリーズ 老いの賜物 その5

親とは


九州へ単身赴任している息子が久しぶりにやってきた。

話しているとき聞いているときの目つきがなんとなく厳しくなっているのに

気がついた。

今働き盛り、公私ともに大変なんだろうな、と察する。

察するだけでもう親としては何もしてやらないし、やれない。

息子が切り出さない限り私は何も聞かないようにしようと思った。

それが大人になった親子だと思う。

もちろん親子の情は一生続くし、母親というものは子供がいくつになっても

子供と思うものなのだ。

50才になった息子にお年玉をあげたというおばあさんがいるという話がある

くらいなのだから。

その心情は理解できるが、けじめというものがある。

動物は親離れ子離れが明確で、生きる術を教えたらもう子を突き放すという。

動物はかなり厳しいことをやすやすとしてしまうのに、人はいつまでも過保

護な感情を引きずる。

人間ってなんとややこしいんだろう。

でも根底にこうした複雑で深い愛情があってこそ、人間として生きる価値が

あるというものだ。


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