映画だ〜い好き 文は福原まゆみ
尾形映画プロデューサーの友人が仕切る映画制作会社で働く映画好き女史が
エッセーを連載してくれてます。
映画女史から賞レースの中の自主映画制作者たちへのエール。
日本アカデミー賞
3月1日は落ち着かない一日だった。今年東京で再スタートする、ダマー国際映画祭の
応募締め切りの日であり、日本アカデミー賞の授賞式もこの日だったからだ。
映画祭の応募の方は、予想通り駆け込み応募がドドドッと押し寄せ嬉しい悲鳴を上げた。
アカデミー賞の方もこれまた予想通り『万引家族』が他を寄せ付けず総なめした。個人
的には大好きな作品だけど最優秀賞からは外れるだろうと思っていたのが『カメラを止
めるな』だった。発想が面白いし、臨場感は群を抜いていたのではないだろうか。関係
者が舞台挨拶やアフタートークに毎日登壇し、自主映画がここまで頑張ったのだから応
援していたのだけど…。是枝組や他の大手作品には敵わないという事か。残念だけど、
理解はした。なにせカンヌも喜ぶ世界のコレエダだ。
アカデミー賞の対象作品となるには条件があり、劇場で2週間以上上映されたものでな
ければならないし、見ていない作品には投票できないし(実際にはできるが、それでは作
品の良し悪しではなく単なる人気投票になってしまう)、年度初めに封切られたものと年
度末に封切られたものとでは、残っている印象に差が出るということも否めない。外国
映画部門の『スリー・ビルボード』などは最早懐かしいと思ってしまったぐらいだ。い
ろいろ不公平感が残るのは仕方ないにしても、やはり目が離せないのも事実。それなり
に面白がり楽しく騒いでしまった。
自主制作映画で素晴らしい内容のものも勿論あるし、映画館で上映できず、地方のホー
ル上映を続けている作品も沢山ある。そんな映画たちの中に案外宝の様な作品も埋まっ
ているものだ。私などは、宝を掘り当てそこにスポットライトを当てるのが映画祭の役
目だと感じている。
『カメラを止めるな』のアカデミー賞優秀賞の受賞と、最優秀賞の落選に刺激を受け、
新しい映画祭のスタートに大いに励もう。
『カメラを止めるな』
監督・脚本・編集:上田慎一郎
出演 : 濱津隆之・真魚・しゅはまはるみ・長屋和彰・細井学ほか
撮影:曽根剛
2017年/日本/96分/カラー