●連載
虚言・実言         文は一葉もどき


横浜が縄張りの元タウン誌ライター。
貧しさにもめげず言の葉を探求し、人呼んで“濱の一葉”。
ウソ半分、ホント半分の身辺雑記を綴ります。
もどきさん、家庭環境から創造性を学んだようです。


残り物には福がある その1


私は三人姉妹の末っ子だ。

当然子供の頃、洋服は姉たちのお下がりだった。

小さい頃は喜んでお下がりを着ていたが、年頃になると自分好みの服を着たいので母に

「また〜おさがりぃ〜やだぁ」

と文句を言うと、

母はいつも

「お古を工夫して自分に合わせなさい」

と言う。さらに、

「“残り物には福がある”っていうからね

と付け加える。

物のない時代、この言葉は大切に物を使い切るためのプロモーション処世訓のようなも

ので、母の口癖になっていた。

私は「“福”ってどんな福なのよ」とつっこみをいれたのかもしれないのだが、母がな

んと答えたのかまったく覚えていない。

ここで話は変わるのだが、今、我が家は老夫婦二人暮らし。

料理が余って困っている。

昔は我が家は大食い一家だったのでつい大目につくってしまうのだ。

その結果、少しずつ残ってしまうのだが捨てるにしのびない。そこで、その残り物を活

かして翌日のお昼に使うのだ。

例えば、カレーなら、ちょっとカレー風味のミートソースに、またはいろいろ野菜を足

してカレースープに、肉じゃがは細かく刻んで市販ピザのトッピングに、野菜炒めはさ

らに海老や卵や野菜を加えてとろみをつけてあんかけ焼きそばに。

さながら、B級グルメのようだが、幸い、私は料理が嫌いじゃないので、これは何に変

身できるか、とか、これを利用すればワンランク上のご馳走になるのでは、などと、工

夫を凝らすのが楽しい。

きっと夫は再利用を見抜いていて、心の中では、

「またぁ〜昨日残りものぉ〜やだぁ〜」

と、昔の私のように言っているのかもしれない。

そこで、私は母のように

“残り物には福がある”って、つぶやくのだ。

どんな福かって?

頭を使って、工夫してボケ防止、栄養満点のバランス食、そして懐が痛まない経済効果。


戻る