映画だ〜い好き        文は福原まゆみ


尾形映画プロデューサーの友人が仕切る映画制作会社で働く映画好き女史が
エッセーを連載してくれてます。
映画女史、先輩熟年女性たちの活躍に勇気をもらったようです。




『一粒の麦 荻野吟子の生涯』


日本初の女性医師・荻野吟子の生涯を描いた作品。『石井のおとうさんありがとう』、

『筆子・その愛―天使のピアノ』などの山田火砂子監督がメガホンを執り、主演の

若村真由美はじめ山本耕史、賀来千香子、柄本明、佐野四郎、平泉成…錚々たる役

者さんたちが顔を揃えている。


男尊女卑も甚だしい明治時代、婦人科の女医の必要性を感じた吟子が幾多の困難を

乗り越えて、日本で初めて女性医師の資格を得る。10代から60代までを52才の若

村真由美が一人で演じており、舞台なら良いが映像ではさすがにきついだろうと思

っていたところ、心配は杞憂に終わった。元々演技力のある女優さんだが、お見事。

表情と声を駆使して一人の生涯を演じきっていた。私は演じ切るという言葉が好き

ではないが、この場合、時代のスパンが長いこともあり躊躇なく言ってしまおう。

見事に演じ切った。各年代を演じたことに加え、時に男にならなければ乗り切れら

れない難局もある。やくざを追い払う場面など、夏目雅子の「なめたらいかんぜよ!」

を彷彿とさせるド迫力だった。


監督の山田火砂子さんは、なんと齢87才。元々ご主人の故山田典吾さんの監督作品

でスタッフを務めていたが、ご主人の没後より監督を務めるようになったとのこと。

70を過ぎての監督デビューらしいから驚きだ。映画好きな私はいつも冗談で「日本

のグランマ・モーゼスを目指します」とうそぶいているのだけど、唯一「できるか

も」と思わせてくれるのが山田監督の存在だ。まだまだこれからも映画を作り続け

ていただきたいし、伝説の女性映画監督として、日本の映画史に足跡を残していた

だきたいと思う。


『一粒の麦 荻野吟子の生涯』
監督:山田火砂子
脚本:重森孝子/来咲一洋/山田火砂子
撮影 : 間賢治
音楽 : 渋谷毅
出演 : 若村真由美/山本耕史/賀来千香子/柄本明/佐野四郎/平泉成など
武男/宮本信子


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