●連載
虚言・実言         文は一葉もどき


横浜が縄張りの元タウン誌ライター。
貧しさにもめげず言の葉を探求し、人呼んで“濱の一葉”。
ウソ半分、ホント半分の身辺雑記を綴ります。
もどきさん、イメージを遊ばせる楽しさに夢中のようです。



漢字の凄さ


俳句をするようになって漢字を書き、旧仮名遣いを勉強するようになった。

植物の名はなるべく漢字で、動詞も例えば逢いたいは逢ひたい、終わるは終はるという

ように旧仮名遣いで書く。

パソコンやスマホで滅多に漢字を書く機会がなくなった身には、なかなかむずかしく辞

書が手放せない。

お蔭で、漢字の力ってなかなか面白く優れものだと気がついた

そもそも漢字は表意文字なのである。

ズバリそのものの絵を簡易化して今にいたる。

例えば魚の名前なら魚偏を、草なら草冠、体の部位を表すには月偏を、というように、

漢字を見れば大体の分類・意味の見当はつく。

つまり漢字のもつ情報量たるや凄いものがあるのだ。

やたらと簡易化するのはもったいなく、眺めているだけでさまざまなことを想像するこ

とができる。

例えば、カタツムリ。蝸牛と書く。虫偏なので分類は虫、しかも渦を巻いている虫、牛

の字が入っているのでのろいイメージが浮かぶ。するとカタツムリそのものなのだ。

さらによく季語として使われる植物ならば、今の季節、萩の花。草冠に秋なので秋を代

表する花であることを伝えている。

イチョウは、銀杏、公孫樹などと書く。

「銀杏」は“実の中が銀色”からきていて「公孫樹」は、“老木でないと実らず孫の代

に実る樹”の意だという。語源を知るとさらに「公孫樹」という漢字を使いたくなるで

はないか。

いまの私のお気に入りは「吾亦紅」と言う字。

“私もまた紅なんです”なんて、なんと意味深でロマンチックな!


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