●連載
虚言・実言         文は一葉もどき


横浜が縄張りの元タウン誌ライター。
貧しさにもめげず言の葉を探求し、人呼んで“濱の一葉”。
ウソ半分、ホント半分の身辺雑記を綴ります。
もどきさん、友人の気持を想像したようです。


友の入院


太極拳仲間のSさんが腸捻転を起こして緊急入院した。

Sさんは3年前にご主人を亡くして一人暮らしの70代。

さびしい、さびしい、と言いながら、最近ようやく一人暮らしに慣れてきた

矢先だ。

夕食後、テレビを見て、お風呂を済ませ寝ようと思ったら、突然腹痛や下痢、

吐き気に襲われたという。

しばらく様子を見たが、ただ事ではないと感じて救急車を呼んだのだという。

Sさんが一人で苦しみ、苦痛の中で救急を決断して119番通報する気持ちはい

かばかりか。

最近、高齢化社会を反映してか、五木寛之、下条暁子、曽野綾子など、老い

方に関する本が相次いで出版されているが、一様に孤独を礼賛している。

果たして老いの孤独ってそれほど大事なのだろうか…

私は考える。

人は老いていくとき何を一番恐れるだろうか?

病気? 貧しさ? 不自由さ?

私なら孤独が怖いと思う。

死ぬ瞬間は独りでもかまわないが、老いていく過程で寂しいのは嫌だ。

人が誰かと付き合うのも家族が助け合うのも人とのつながりが大切だから。

でも人とうまく折り合えなかったり、ときには境遇の巡り合わせなどで孤独

は避けて通れない。生きていくことはその孤独に耐えることでもある。

一人で病院へ入ったSさん、どんなにか心細く寂しかったことだろう。

私たち太極拳仲間は早速色紙にSさんを励ます寄せ書きをつくった。

決して一人ではなく仲間が見守っているのだと知らせたい。


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