映画だ〜い好き        文は福原まゆみ


尾形映画プロデューサーの友人が仕切る映画制作会社で働く映画好き女史が
エッセーを連載してくれてます。
ひとつのテーマでふたつの作品を並べて想像する遊びのよう




空想映画館


根っからの映画好きで、おそらく人の何倍も映画を観てきた私は、学生時代からよく空想

映画館なるものを頭の中で思い描いていた。例えば、映画美術監督アレクサンドル・トロ

ーネルを特集して、『ピラミッド』vs『アパートの鍵貸します』とか、ヒットラーを嗤い

飛ばす特集で『独裁者』vs『生きるべきか死ぬべきか』なんて言うのも面白い。ちょっと

解説を加えると、『ピラミッド』は、1955年のハワード・ホークス作品で、巨大なピラミ

ッドの中に、国王暗殺を企てた王妃たちが閉じ込められる。全ての通路が大掛かりな仕掛

けでどんどん閉ざされていくのが見どころ。『アパートの鍵貸します』は、1960年のビリ

ー・ワイルダー作品で、主人公が出世のために、浮気をしている上司に自分の部屋を貸す

が、浮気相手を知って愕然とし、出世より大切なものに気付くという話。まず主人公が働

くのは大手保険会社で、オフィスがとても広くて驚く。広く見えるように、トロ―ネルが

工夫をしているのだ。奥に行くほど天井のライトを実際より小さくし、遠くの人物にはス

ーツを着た子どもを配置して遠近感を強調する。このセットは見ものだ。『独裁者』は

1940年アメリカで公開されたチャップリンの長編で、ヒットラー(らしき人物)が大きな地

球儀のバルーンを飛ばして遊ぶシーンは、おそらく誰もが知っているだろう。、『生きる

べきか死ぬべきか』は1942年のアメリカ映画で、監督はエルンスト・ルビッチュというコ

メディの大御所。、ワルシャワで「ハムレット」を上演している劇団が、ナチスの侵攻に

際し海外脱出を図るが、ヒットラーに扮した役者が予期せぬ活躍ぶりで笑いを誘う。社会

風刺コメディの傑作ではなかろうか。また、奇跡の駆け下り特集なんて言うのも考えた。

『やぶにらみの暴君』vs『ルパンV世カリオストロの城』だ。急勾配の駆け下りシーンが

あり、アニメならではの表現として、大好きな場面だ。考え始めると、楽しくてつい夜更

かしをしたものだった。


戻る