映画だ〜い好き        文は福原まゆみ


尾形映画プロデューサーの友人が仕切る映画制作会社で働く映画好き女史が
エッセーを連載してくれてます。
フランソワ・トリュフォーの思い出




映画の都パリ


もうすぐ7月14日がやって来る。言わずと知れた(知らないか)パリ祭の日だ。パリ祭

と言うのは日本だけの呼称で、本国ではフランス国民祭と呼ばれるらしい。ルネ・クレ

ールの『巴里祭』(1933年制作)が有名なので、この呼称が定着した。

パリ祭には一度だけ行ったことがある。映画学生だった時にフランソワ・トリュフォー

が亡くなり、お墓参りをするため夏休みを利用してパリへ行った。お墓はまだできたば

かりで、ピカピカに輝く黒い墓石に奇麗なお花が供えてあった。

トリュフォーの映画で最も人気の高いのは、少年期の自伝的作品と言われるデビュー作

『大人は判ってくれない』だろう。家出をした不良少年が鑑別所に入れられ、自由を求

めて抜け出したラストシーンが素晴らしく、私などはこれを映画史上最高のラストシー

ンだと思っている。原題は、直訳が「400回叩き」で、フランス語の慣用句としては

「無分別」なのだそうだ。

このラストシーンについては、あまりにも素晴らしいため言及されることが多いが、私

にとってはファーストシーンと言うかタイトルバックも大のお気に入りだ。

車で移動しながらパリの街を撮影しているのだけど、常にエッフェル塔がフレームに入

るように撮っている。一瞬建物の陰に隠れても、その後ろにはエッフェル塔があり、す

ぐにまた顔を出す。常に遠くから見守ってくれているようで、パリの愛らしいイメージ

を決定づけた。

いつか東京で、東京タワーで同じことをやってみたい。


『大人は判ってくれない』
監督:フランソワ・トリュフォー
撮影:アンリ・ドカエ
主演:ジャン・ピエール・レオー
製作国:フランス
上映時間: 99分
公開: 1960年 


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