映画だ〜い好き        文は福原まゆみ


尾形映画プロデューサーの友人が仕切る映画制作会社で働く映画好き女史が
エッセーを連載してくれてます。
チャップリンのこと




モダンタイムス


先日、チャップリンの長編映画のDVDを貸してほしいと頼まれた。「オッケー」とは

言ったものの、『モダンタイムス』しか持っていない。きっと一番人気の『街の灯』

を観たいに違いないと思い、「ごめんね。『モダンタイムス』でもいい?」と言った

ら、「それが必要なんだ」と言われた。「でもいい?」なんて言って、チャップリン

に失礼だったなぁ。ごめんね、チャーリー。

「それが観たい」ではなく、「必要」ってことは、きっと『モダンタイムス』につい

て講座か何かで語るのだろう。映画通ではなさそうな人だから、大きなお世話かもし

れないと思いながら、プチトリビアをメモして渡すことにした。

1936年製作/米国作品/モノクロ/サウンド版/ 87分

監督/脚本/製作/音楽/主演:チャールズ・チャップリン

資本主義社会において、過酷な労働のため精神に異常をきたし、職を転々とするチャ

ーリーと、貧しさのあまりパンを盗んで捕まった若い女性の話。チャーリーがスパナ

を持ったまま歯車に巻き込まれるシーンや出鱈目な外国語で歌って大うけするシーン、

ヒロインと共に去っていく後ろ姿が有名。

1927年に作られていた『メトロポリス』というSFの大傑作があるが、資本家対労働者、

行進する労働者たち、労働者を飲み込む機械など、共通点が多い。きっとチャップリ

ンはこれを参考にしたに違いない。

1931年には、前作の『街の灯』が作られており、これも一部のセリフ以外は音楽のみ

のサウンド版だった。『モダンタイムス』の頃には既にトーキーが普及しており、サ

イレントに拘っていたチャップリンは、時代の流れに出遅れた感がある。

チャップリンは、本作で資本主義を批判し、後にも政治的な内容の作品を作ったため、

共産主義のレッテルを貼られてアメリカから追放された。アカデミー名誉賞受賞のた

め1972年に帰国したのは、実に20年ぶりだった。

テーマ曲の「スマイル」は、チャップリンが作った曲の中で最も人気があり、あまり

にも有名。ナットキング・コールやエルビス・コステロらがカバーしており、どれも

泣けてくる。

クリスマスの日に天国へと旅立ったのは、1977年。チャップリン88歳の時だった。 


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