●連載
虚言・実言         文は一葉もどき


横浜が縄張りの元タウン誌ライター。
貧しさにもめげず言の葉を探求し、人呼んで“濱の一葉”。
ウソ半分、ホント半分の身辺雑記を綴ります。
もどきさん、友人の揺れる心に適確(?)なアドバイス。


恋バナ


年をとると、友人が集まればまず病気の話。

そういえば、めっきり恋バナはしなくなったなあ、と思っていた矢先、友人から久しぶ

りに恋の相談があった。

学校の同窓会で再会した昔の男友達から会ってほしいとメールがきたそうだ。

メールアドレスは交換していないので、電話番号のショートメールを繰り返して口説い

てくるそうだ。

彼女はその都度断りの返信をするのだが、そのうち1回なら会ってもいいかな、と心が

動くようになったという。

どうしよう…という。

私の野次馬根性がムクムクと動き出した。

まず彼女の気持ちの在りようをじっくり聞いた。

彼女の考えはこうだ。

(私はやさしい家族に囲まれ、お稽古ごとをしながら日々充実している。十分幸せだし

この日常を壊したくもない。それにもう年なのだから余計な神経を使うのは面倒だ)

さらに(でも…)と続く

(正直、告白を受けて、まるで別の世界が開かれたみたいにワクワクした。久々に味わ

う新鮮な感情。よくよく考えれば、年だからこそ、これから先こんな経験はないと思う。

ならばこんな機会をむげにしてはならないような気がした。一度だけ会って話してみよ

うかと…人生の素敵な思い出になるかも…)

ゆれる女心が見て取れる。

そこで私の回答は、

(その歳でそんなみずみずしい感情がわくなんて、僥倖としかいいようがないかも。経

験を積んだ分別盛りのオトナが出会って判断することなら、どう転んでもそれはそれで

いいんじゃない? ただオトナの恋は複雑で、すでに身の回りにさまざまな事情ができ

あがっているので、かなりエネルギーがいると思う。後悔のないようにしたら? 何事

もチャレンジ!)

と無責任にけしかけた。

昔、“命短し恋せよ乙女”と歌われたが、人生百年と言われる今、さしずめ、“命は長

し恋せよ老婆”かも。


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