5/7のしゅちょう
            文は田島薫

(山口達也さんの誠意、について


前回、一般論的に彼のことについて同情的に書いたんだけど、テレビのワイドショーな

どでは今だに彼の謝罪会見のコメントに対する批判がくり返され、グループメンバーか

らのそれも(これは番組編集のせいだから、グループメンバーが今も同じ気持だ、って

決めつけることはできないんだけど)くり返され、これからも彼を見放すつもりはない

んだけど彼の謹慎や努力による更正を願う、ってような犯罪者を見下す形に聞こえる話

ばかりが多くの人々から当然のことのように出て、けっきょく彼が提出してて保留だっ

た辞職願いが、彼の再度の要請でプロダクションの社長の判断で受理されることになっ

たようだ。

前回も書いたように、自宅に呼んだ未成年の女子高校生に酔って無理矢理キス、ってこ

とを聞いて、それがいいことだ、って思う者はひとりもいないはずだけど、それが強制

わいせつ、ってニュアンスで広まった場合、取りかえしのつかない犯罪を犯してしまっ

た、ってイメージをだれでも感じてしまうかもしれない。

実際に彼がどのように乱暴に女性にキスをしたのかはわからないんだけど、少なくとも、

そばにもうひとり彼女の友人もいたわけで、おどろいてすぐにふたりで帰った、ってこ

とのようだからいやがって激しく泣叫んで抵抗するのを無視して力ずくで押さえつけて

た、ってわけでもないのだろう。もしそうであれば、さほどの乱暴をするつもりも実行

もなかった、って彼が言い訳してもよかったのだけど、それをしなかったのはなぜか。

被害女性の家族としたら、未成年の娘にいい年の男からいきなりのキスをされた、って

聞けば、抗議したい気持が出るのは当然のことかもしれないんだけど、それをまず聞い

たNHKは問題にしなかったのは、その時点で多分深刻な事件だと感じなかったからかも

しれないし、山口さん当人も女性にあやまりたい気分はあったとしても、自分の好意を

軽率な行動で示した後悔以上の重大事だとは多分感じてなかったのだ。

それが、動かないNHKに怒った家族が警察に訴えたら、知らぬ間に未成年者に強制わい

せつ、ってセンセーショナルなタイトルでマスコミにも広まってしまい、もっと慎重な

事実確認を山口さんにもするべきだったのに、知らずだれもが冷静さを失ってしまった

のか、連帯責任のような気分だったんだろう、メンバーのひとりがまず、強制わいせつ、

と深刻に受け止めて勝手に涙の謝罪したりしてどんどん大げさな話題になり、さあ、山

口被告に謝罪会見を、ってことになったのだ。

そこで彼は、自分の素直な感想を順を追って述べて行けばよかったはずなのに、すでに

許されないような大変なあやまちだ、ってメンバーが謝ってしまってるし、ここで弁解

めいた話をしたら、反省がない、って余計に叩かれてしまい、グループの存続にも支障

が出てしまうにちがいない、それほど女性が傷ついてしまったってことは今まで想像も

してなかったし、こっちもそんなことをしたつもりもなかったんだけど、ここは最大限

に被害者である女性の気持を考えて心からの謝罪をするべきだろう、ってそれをした後

で、彼が今一番心配なのはグループに迷惑がおよんで困らせてしまってることへの謝罪

と許しをもらいたかったのだ。ところがグループのメンバーは全員、世間からの彼への

批判の目を意識し、被害者への謝罪が今の重大事と思い込んだのだ。


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