映画だ〜い好き 文は福原まゆみ
尾形映画プロデューサーの友人が仕切る映画制作会社で働く映画好き女史が
エッセーを連載してくれてます。
よかれと思ったのが、とほほなことに。
恩師の思い出
映画評論家で日芸映画学科教授だった、今は亡きT先生。世界の映画史は殆どこの先
生から教わった。とてもお世話になった先生なのに、学生時代、私たちは失礼な事ば
かりしていたのを思い出す。
ある夏の合宿で、原典講読というクラスをやっていた時の事。
映画学科・理論評論コースの私たちは、1行を2つ〜3つの英単語が占めているような
映画理論の本を読んでいた…いや、眺めていた。訳がわからず、当然退屈する。よっ
て休憩時間には思いっきりリラックスし、開放感に浸り…正直になる。先生もそれを
察してか、難しい話ではなく飼いネコの話をし始めた。インテリを絵に描いた様なノ
ーブル教授が、精一杯の配慮をもって話題を選んだのだろう。これなら若者と楽しく
会話できると思われたに違いない。
「うちのネコは人間にすると70才ぐらいでねぇ」と仰った。
すると配慮のハの字もない天真爛漫なティーンエイジャーが、思ったまんま言った。
「すっごい年寄りィー」
ああ言っちゃった〜!先生72才なのに・・・。
また、アントニオ猪木の話になった時、派生的に大きいアゴの話になった。先生も大
きめのアゴをしてらした。
配慮のハの字もない天真爛漫なティーンエイジャーが言った。
「猪木ってホント、アゴ大きいよねー」
先生のアゴの事が頭に浮かんでいた私は、咄嗟に、
「そんなこと言っちゃダメっ」
と言った。
言わなきゃよかった。
私が言ってしまったことにより、先生のアゴも大きいという事実がよけいに浮き彫り
になり、みんながヤバイ!という雰囲気に…。