映画だ〜い好き 文は福原まゆみ
尾形映画プロデューサーの友人が仕切る映画制作会社で働く映画好き女史が
エッセーを連載してくれてます。
洋画と邦画、それぞれの国でのタイトルの付け方。
映画のタイトル
先日、元ワーナーブラザースのOさんとお会いした時、映画の原題と邦題の話になった。原
題を直訳したものもあれば、かなり捻ったものもある。「愛」を付ければ女性客が増える等
々、現場のお話を聞かせていただいた。
映画のタイトルもいろいろ調べてみると面白い。最愛の妻を亡くし、風船を付けた家ごと空
を飛んで旅する『カールじいさんの空飛ぶ家』は、邦題は長めだが、原題は『UP』。それだ
けかいっ!!と、突っ込みたくなるタイトルだ。ノーラ・エフロン監督、メグ・ライアン/トム・
ハンクス主演のラブコメ『めぐり逢えたら』は、原題が『Sleepless in Seattle』。シアトル
の不眠症なんて、邦題とは全く違うではないか!と、これも突っ込みたくなるところだが、実
はこの作品、ある旧作に着想を得たものだった。運命の人と旅先で出会い、エンパイアステ
ート・ビルの屋上での再会を約束したものの、すれ違ってしまう『An Affair to Remember』
だ。この作品の邦題が『めぐり逢い』。『めぐり逢い』の方は運命の人にめぐり逢ってしま
った話だけど、『めぐり逢えたら』の方は何とかしてめぐり逢おうとする話だから、ぴった
りの邦題。面白いなぁ。
逆に邦画に付けられる英語タイトルも面白い。三谷幸喜監督作品『ラヂオの時間』は、ラジ
オの生放送中に、ベテラン女優の我儘によって話がどんどん変わり、現場が振り回されるコ
メディだった。この英語タイトルが『Welcome Back Mr. McDonald』。これも原題と全く
ちがう。ヒーローがヒロインに出会えるかという劇中劇が進む中、主演女優より待遇が悪い
ことにヘソを曲げたドナルド・マクドナルド役の男優が、職場を放棄する。なんだかんだ、
すったもんだで現場に戻ってくるのだが、劇中のこのエピソードから付けられたタイトルだ
った。
三谷作品からもう一つ。『ステキな金縛り』というのがある。これは『Once in a Blue Moon』。
滅多にないと言う意味だが、これは法廷で幽霊に証言させる話で、滅多にないどころか絶対
にあり得ない。ステキにふざけたタイトルではないか。こんな遊び心の発見も映画の楽しみ
の一つなのだ。
各作品の情報を載せたいところだけど、〆切過ぎているので、今回は取り急ぎ一つだけ。
『カールじいさんの空飛ぶ家』
製作:ピクサーアニメーション・スタジオ
監督:ピート・ドクター、ボブ・ピーターソン
2009年公開