●連載
虚言・実言         文は一葉もどき


横浜が縄張りの元タウン誌ライター。
貧しさにもめげず言の葉を探求し、人呼んで“濱の一葉”。
ウソ半分、ホント半分の身辺雑記を綴ります。
もどきさんと夫に希望の光のようです。


老いても・・・


入退院を繰り返すうちに重度の脊柱管狭窄症になって引きこもり状態の夫に、ケアマ

ネージャーがやってきてしきりにリハビリテーションセンターへ行くように勧める。

どうやら、国の老人医療費がうなぎ上りに膨らむ昨今、寝たきり高齢者をふやさない

ための政府の方針らしい。

「足が弱るといけません」                    ハイ。

「運動しないと筋肉が衰えます」                 ハイ。 

「筋肉が衰えると血液の循環も悪くなります」           ハイ。

「体の内臓だって衰えていきます」                ハイ。

「脳の働きだってにぶくなってボケてしまいます」         ハイ。

というわけで、夫はあんなに嫌がっていたのに、観念したのかいやに素直になって、

今月から週に一回の運動リハビリに行くようになった。

施設にいくのに車の送迎サービスがあり、看護婦を含むスタッフが4人もついて至れ

り尽くせりなのだ。その代り、3時間みっちり運動でしごかれるそうだ。

患者はいまのところ常時男2人、女6人ぐらいでここでも女性が圧倒的に多い。

男性は総じて無口。女性はよくしゃべり、好奇心が旺盛で、新入りの夫に、待ってま

した、とばかり話しかけてくるという。

「世の中男と女、いくら年をとっても異性が入ると少しでも気を引こうとモーション

かけてくるんだなあ、これは本能なのかなあ」

とは夫の言葉。

どうやら、まんざらでもない様子。

ようやくリハビリに重い腰をあげてくれたので、私はシメシメとほくそえむ。

どうか、長続きしますように。


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