映画だ〜い好き        文は福原まゆみ


尾形映画プロデューサーの友人が仕切る映画制作会社で働く映画好き女史が
エッセーを連載してくれてます。
映画鑑賞について、映画女史の受信アンテナは高感度のようです





日藝映画祭


第8回日藝映画祭が始まった。現役の映画学科の学生さんたちが企画し、プログラミ

ングや上映のための交渉、パンフレットや宣材の制作など全て自分たちでやっている。

今回のテーマは「朝鮮半島と私たち」。「私たち」と入っているのがいい。ただ知ろ

うとするだけでなく、自分たちと関りある事として捉えている若い学生さんたちの姿

勢が素晴らしい。前回の「映画と天皇」に引き続き骨太なテーマだ。やり方次第では

上映の妨害など起こりかねないと危惧するけれど、今のところは大丈夫らしい。こん

なテーマでのプログラムは劇場が組むにはリスクが高すぎるから、学生映画祭ならで

はのことのようだ。確かに。

ラインナップを見ると「伽椰子のために」、「絞首刑」、「GO 」、「パッチギ」な

ど観たことのある作品が多いが、中には滅多に見る機会がないものも含まれている。

特に、貧しく授業料を払えない子と日本人教師の交流が含まれる「授業料」は、この

機会を逃すと、日本で観る機会はまずないであろう作品だ。上映終了後、即刻上映素

材を韓国映像資料院に返却しなければならない事情がある。パンフレットによると、

「授業料」は中国電影資料館から入手した、現在残っている韓国映画の中でも6番目

に古い劇映画だとのこと。これは貴重だ。こんな機会を作ってくれた日藝映画祭に感

謝する。

初日に観た短編「ともだち」も良かった。クラスの中で一人だけ民族衣装を着ている

朝鮮人の子が気になり、彼の後を追いかける日本人の子。暫しの追いかけっこの後、

二人は着ていた服を交換する。ただそれだけの話なのに、いやそれだけだからこそ、

ストレートに心に響いてくるのだろう。音声が失われているにも関わらず、全く問題

なく観れたのは、清水宏監督の素直な演出のためか。


『授業料』
1940年/朝鮮/83分/モノクロ
監督 : チェ・インギュ/バン・ハンジュン
撮影 : イ・ミョンウ
音楽 : 伊藤宣二


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