映画だ〜い好き        文は福原まゆみ


尾形映画プロデューサーの友人が仕切る映画制作会社で働く映画好き女史が
エッセーを連載してくれてます。
映画女史に、監督の手腕がよくしらなかったロックンローラをヘビロテにさせたようです





ボヘミアン・ラプソディ


ちょっとしたQueenブームが起こっているようだ。フレディ・マーキュリーの伝記映画

『ボヘミアン・ラプソディ』が当たっていて、私の周囲はみんな絶賛している。だから

と言う訳ではないけれど、私も観に行ってきた。驚いたことには、特別Queenファンで

もない私なのに殆どの曲を知っていた。改めてQueenの凄さを思い知る。


映画は想定外の感動もので、最後までロックオンされてしまった。理由を考えてみると、

まず音楽劇として素晴らしい。フレディの人生の重要ポイントに、Queenの名曲が絶妙

に絡められている。1曲流す時、背景の映像をどうするかは大きなポイントとなるが、

ミュージックビデオ風な映像あり、ドラマの展開を押し進める映像あり、時間をすっ飛

ばす映像や鶏が歌うのかと思わせるコミカルな場面があったり…。よく考えられている

なぁ。フレディやメンバーの音楽に対する感性、作曲やレコーディングの時のハチャメ

チャなディレクションなども細かく描かれており、Queenがいかに斬新な音楽作りをし

ていたかが窺える。これからはロックオペラに敬意を払おうと決心した。

全体的にフレディの人恋しさがとても切なく描かれており、特に恋人メアリーとの心の

すれ違いの描写は切なさ倍増。一緒にいたいのに離れた場所での乾杯は、切なくて切な

くて思わず泣かされた。ここぞという時のクロース・アップなど、フレディの心理に近

づくキャメラワークもよかった。それにしてもフレディ役のラミ・マレック、何もかも

全てを語ってしまいそうな大きな瞳だったなぁ。

音楽を観衆のものにしたライブでの臨場感は圧巻。Queenの考え出した演出を映画の中

にも効果的に取り込み、映画の観客も引き込んでいったのはブライアン・シンガー監督

の手腕だ。この監督、大ヒット作『ユージュアルサスペクツ』の監督なのか。意外だっ

たのは動物の芝居が素晴らしく、特に猫のトムとジェリー(なぜかどちらも猫)、それと

ロミオが良かった。

こうして振り返ると、本作はQueenという伝説のロックバンドの映画であり、フレディ

を取り巻くファミリーを描いた、切なさと迫力が同居する色濃い作品だった。

ティーンエイジャーの頃からQueenの音楽に触れていたのに、なぜ嵌らなかったのか。

なんとももったいないことをしたものだ!そんなことを思いながら今ではボヘミアン・

ラプソディをヘビロテしている。


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