●連載
虚言・実言         文は一葉もどき


横浜が縄張りの元タウン誌ライター。
貧しさにもめげず言の葉を探求し、人呼んで“濱の一葉”。
ウソ半分、ホント半分の身辺雑記を綴ります。
もどきさんの悲喜こもごも買い物シリーズの6。


シリーズ こんなもの買った

10円切手


先日出した、荷物の届いた旨のお礼のハガキが“料金が足りません”と付箋が貼ら

れて戻ってきてしまった。

うっかり52円の古いハガキのままだしてしまったのだ。

どう巡り巡ったのか、ヨレヨレにくたびれたようなハガキを見て、出戻り娘を迎え

るように“おお、おお、可哀そうに”と思わず胸に抱きしめた。

そっか、今はハガキって値上げして62円なのだ。

慌てて、切手やハガキを入れてある引き出しを開けると、出てくるわ、でてくるわ、

古いハガキや便せんや封筒が。

ハガキや封筒の右上にある郵便番号が5桁のもある。

昔、私は筆まめな方でよく手紙を書いた。気に入った便せん、封筒を溜め込んでい

たのだ。

あの頃は字の下手なのを気にしながらの手書きだった。やがて、ワープロに、パソ

コンになったのだが、届けるのは相変わらず郵便を利用したものだ。

それが、いまやほとんどメール。郵便は年賀状ぐらいである。

ああ、なつかしい! 便せんにびっしり書かれた近況報告や本の感想文やらラブレ

ターの頃が。ちゃんと主語動詞が入り、起承転結のある文章があった。

最近孫からきたメールには、ふんだんに絵文字が。そして尻切れの文章の後に(笑)

の代わりに(W)、了解の代わりに(りょ)である。ああ。

とりあえず、戻されたはがきに10円足して再度出そうとしたが、引き出しには10円

切手がなかった。

あわてて郵便局へ行って、10円切手を5枚ほど買っておいた。


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