●連載
虚言・実言         文は一葉もどき


横浜が縄張りの元タウン誌ライター。
貧しさにもめげず言の葉を探求し、人呼んで“濱の一葉”。
ウソ半分、ホント半分の身辺雑記を綴ります。
もどきさんの悲喜こもごも買い物シリーズの3。


シリーズ こんなもの買った

その3 お持ち帰りインドカレー


男が言った。

「“武士は食わねど高楊枝”って言葉があるだろ。自分はそんな生き方を

心掛けているんだ」

ふ〜ん、平たく言えばやせ我慢ってわけね。

「いやいや、プライドに生きている、って言ってほしいな」

なんだか生きにくそう。

「男なんてそんなもんだよ」

そういえば、男はみんなナルシストっていうからね。

でも、それって、まかり間違えれば虚栄かも。

虚栄心といえば、女だって負けてはいない。自分の値打ちを高めるために

見栄を張る。ただ女の虚栄心は男よりずっと現実的なのかもしれないけど。

男と女の違いを語りだしたらキリがないから、この辺にして…

男にも女にも当てはまる話題。

老若男女だれもが好きなカレーの話です。

肉、タマネギ、ジャガイモ、ニンジンの入ったドロッとしたカレーライス

って日本で生まれたものなんだって。ルーツは日本海軍だそうな。知って

いた?

昭和に子供時代を過ごした多くの大人にとって、ごちそうといえばそのド

ロッとしたカレーだった。今晩はカレーよ、母親がいえばバンザーイとい

った子供の頃の記憶がある。

さらにどの主婦も、夕食づくりが面倒なときの手抜き料理といえばカレー

ライスなのだ。

そんなポピュラーなカレーライスも、グルメの時代を経て、たかがカレー、

されどカレー、となった。

ある日、病床にある夫がカレーを食べたい、と言った。それもナンと一緒

に食べる本場ものを。

そこで最寄り駅の近くにあるインドカレー専門店へひとっ走りした。

奥のキッチンには色の浅黒い目の大きなインド人と見習いなのか日本人の

青年が忙しく立ち働き、インド人の奥さんとおぼしき丸顔で愛想のいい店

員が仕切っている。

具は豚肉や鶏肉や魚肉などお好みで5種類あり、辛さも激辛、中辛、普通、

とお好みで。スパイスの利いたサラサラのスープはまぎれもなく本場物で

ある。

もちろんお持ち帰りオーケー。

熱々のカレーを個別に蓋付きのプラスチック容器に、ナンは焼き立てを袋

に入れてくれた。

持ち帰って、食べたらその味わい深いこと! ナンの美味しいこと! ま

た食べたい!


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