1/29のねこさん       文は田島薫

グレのこころみ


相変わらず玄関前の段ボールのキャットハウスにはむんが寝泊まりして、出かけては

ごはん食いに帰って来て、合間には母親のグレも見回り方々ちょっと食いに来たりし

てるんだけど、きのうの午後、わが家の前のアパートの駐車スペースの奥にグレがい

て身を低くしながらなにかを目で追ってるんで見てると、わきにある坂沿いの家の少

し高くなった庭に来てる小鳥の動きに反応してたらしい。で、しばらく、飛び上がっ

てみるような、あきらめるような動きをくりかえしてから、私に気がつくと、ゆっく

りとこっちを向いて座り込みこっちをじっと見てる。


あそこでもごはん食ったし、腹はいっぱいなんだけど、そこに鳥さんがいるね〜、鳥

さんにはわるいけど、鳥さんはおいし〜食い物でもあるんだよね。いつもごはんくれ

てるあそこの人たちに、ちょっとしたお礼に、ひとつあれをつかまえて持っててやる、

ってのはど〜かね、こ〜やって、ねらいをさだめて、今か、今か、おっと、体がちっ

とも動かないね〜、あ〜、腹いっぱいだしね〜、こりゃ、無理か〜、おっと、ごはん

くれてるあんにゃろめがこっち見てやがるね〜、なんでもないよ〜、鳥さんをつかま

えてそれを持っててやろ〜なんて思ってなんかないんだよ〜、わたいはただ、こ〜し

て食後の休憩してるだけなんだよ〜、だ、ばきゃろ〜。


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