1/2のしゅちょう
            文は田島薫

忍耐と寛容、について


よく中小企業の社長室なんかの壁に「忍耐」って書が掛けられてるのを見かけたのは、特

に下請け企業などが常に取引先からの無理難題に耐えて応える必要があったためであり、

そうやって頑張って少しづつ会社を大きくしたり信頼を得て長年の継続を重ねられたこと

に、社長は誇りとともに大きな教訓を感じているからだろう。

そうして今に至り、自分の方が下請けを使うようになった時、自分が大変な思いをしたの

と同じことを要求するようになるかもしれないし、自分がされたような理不尽なことはし

ないように気をつけるかもしれない。で、立場が上になった場合は自由にどちらのやり方

も選ぶことができるんだけど、自己利益を優先して前者を選ぶ方が多いかも。

だれでも自分の利益が損なわれるのは嫌いなはずで、今まで自分の分だと思ってたものを

他から、もっとよこせ、って言われたら抵抗したくなる気持は自然だろう。

かつて自分も貧しい不遇な時期を乗り越えてきて今があるのだから、同じ苦労をするべき

だ、って主張にも一理があるのかもしれない。

ところが、世界や時代はそんな筋立てでバランスが取れるほど公平なものじゃないわけで、

がんばろうにも、負債をかかえた上、家族に看病が必要な病人をかかえてたり、年齢など

を理由に最低賃金のパートでやっと子供を養ってる親とかも多くいるのだ。

もっと言えば、世界には、その日の食事さえままならない生活を強いられ、ちょっとした

病気になればそれはすぐに死を意味する、ってような過酷な状況の紛争難民なども100万

単位以上いたりするわけで。

わが国のとなりでは、まだ充分に食べることができない多数の国民をかかえた北朝鮮のリ

ーダーが、体制を批判する米国とそれに追従してるわが国政府に体制転覆されないように、

との一心で核兵器開発してる事情を認めず、体制保証も認めず、ただそれに上から目線で

中止を迫り、要求を飲むまでただ経済制裁強化を叫んだり実行してるだけの日米の政府の

やり方には相手の立場への理解や、自らの忍耐と寛容さもないのだ。

北朝鮮には全く核兵器開発をやめるつもりはないのだから、日米主導の圧力政策は、ただ

ひたすら相手の忍耐が切れるのを期待してるだけの愚策なのであって、その忍耐の切れ方

が期待した形で行われる保証はないのだし、大きな危険もはらんでるのだ。

世界平和の観点から見れば、どうしたって忍耐と寛容が必要なのは、豊かさの少ない弱い

立場の方ではなく、豊かさが多い強い立場の方なのだ。


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