●連載
虚言・実言         文は一葉もどき


横浜が縄張りの元タウン誌ライター。
貧しさにもめげず言の葉を探求し、人呼んで“濱の一葉”。
ウソ半分、ホント半分の身辺雑記を綴ります。
もどきさんの俳句教室、会場主の悩みもあるようです。



Shall we 俳句? その 4

本屋の悩み


句会ゆくコオロギ鳴くや外階段

と誰かが詠んだ。これには皆大きくうなずき苦笑い。

本屋の2階を会場とした俳句教室なのだが、2階へ上がる外階段がさびてボロボロ、秋の

訪れとともに侘しさが一層身に染みるのである。

本屋の店主は大いに恐縮して事情を話す。

「修理をしたいけど、今は余分な金を出せなくてね。申し訳ありません。最近のネット

販売、電子書籍の出現に加えて、大手古本屋が幅を利かしてお客は新刊を買わなくなっ

たし、図書館も充実してるし…まあ、いろいろと事情が重なって、昔ながらの町の小さ

な本屋は本当に経営が苦しいんですよ。私はね、なんとか街の本屋の灯りを消したくな

い一心で続けてますけど・・・」

皆、同情して店主の意気に共感し、うなずいた。

そこでこの本屋生き残りになんとかできないかと考えを巡らしてみる。

「この2階の教室をもっと活用すれば?」

店主の言うには、今はギター、川柳、俳句、ときどき会議などに部屋を貸しているとか。

「一体この場所代はいくら?」

2時間3000円だという。

「へぇ〜、自治体の場所と比べると結構高いんですね。もっと安くしてもいいからフル

活用して、まず利用してもらう方がいいのでは? 例えば、ミニコンサート、趣味の作

品の展示会、講演会とか」

「年寄りが多いから骨董市もいいんじゃない?」

「大体この2階が貸教室だなんてみんな知らないから、まず宣伝しなくちゃ。こんなに

駅に近いいい場所なんだから需要はあると思う」

「この街の唯一の本屋だし、読書に関連する文化的催しをして、ここを文化発信のサロ

ンにしたら素敵じゃない?」

などといろんな意見が出て気勢をあげる。 

山っ気のある私はこういう話が大好きだ。夢があって楽しいもの。

みんなも俳句そっちのけで、しかも自分の身に直接損得がふりかからないから、次々と

無責任な意見を出して大風呂敷を広げるありさま。

      悩みごと人の情けと秋の空



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