思いつくまま、気の向くまま
  文と写真は上一朝(しゃんかずとも)


シャンせんせいのガンリキエッセー。
シャンせんせい、過酷な旅から帰還のようです、エピソードその7。





モロッコへいってきた

バスの窓から「砂漠の洗濯」





今回の旅行は、移動の旅であった。

全旅程、約2,500kmを走った。北海道の北端、稚内から九州の鹿児島までの

道路距離がおよそ2,960kmであるから、日本の北から南までの距離の8割を

走ったことになる。


全旅程バスでの移動であったので、つぎつぎと入れかわる景色を見ているとあきな

い。モロッコなんて砂漠ばかりで、おなじ景色を見ていてどこがおもしろいと言う

かもしれないが、砂漠でも砂砂漠、礫砂漠、大きな石ころばかりの砂漠と変化に富

んでいる。中央部には2,260mのアトラス山脈越えもあるし、軽井沢顔負けの

緑豊かな避暑地もある。その麓には豊かな水にめぐまれた渓谷も、と、それこそ山

あり谷あり砂漠あり、である。


砂砂漠がおわり礫砂漠になると農地がふえてくる。地面の石をどけると畑作に適し

た土がでてくるようだ。肥料の話しをきかなかったのでたぶん地味が肥えているの

だろう。もっともモロッコは中国に次いで世界第二の燐鉱石埋蔵地であるので、肥

料の三要素チッソ、リン酸、カリのうちリン酸はタップリあるのだろう。足りない

のは水だけだ。川があっても塩分が強い川もあってやたらに水を引くわけにはいか

ない。現在モロッコは農地開墾に力をいれていて、よい水を供給するためにダムを

造り、用水路をもうけて畑地に水を供給している。

車窓に見えたのは、用水路からふんだんに水をとってタライで洗濯をしている女性

の姿。

こちらでは手を使わないで足で踏んで洗うようだ。絨毯のように大きなものを洗う

ときは、地面に敷いたビニールシートに水をためてプールをつくり、2,3人で足

踏みをしながら洗っていた。用水路ができるまでは、砂漠の井戸からバケツで汲む

水の量はたかがしれているので、ここに住む人はめったに洗濯をしたことがないだ

ろう。いま、どんな気持ちで洗濯をしているか知りたかった。


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