モロッコへいってきた
バスの窓から「イフレン」
バスは動き出した。
小アトラスの裾に広がる高地を走っていたバスは、アトラス杉の林を縫うように
登りはじめる。Hさんの「右手を見てください。山のはげている所はスキー場で
す」。これを聞いてモロッコにスキー場とはこれいかに、と思ったが説明のつづ
きを聞いて納得した。このあたりの標高は1500mくらい。冬場にはかなりの
雪が降るそうだ。1月から3月初旬まではスキー場。夏はトレッキングの客でに
ぎわうという。
やがて杉の林がひらけたと思うと、ヨーロッパの保養地とみまがう瀟洒な町並み
があった。
イフレンの町だ。ここイフレンは標高1650m。冬は雪にうもれるが夏は涼し
い。夏の暑さがはんぱではないモロッコにとって絶好の避暑地である。1929
年フランスの保護領であったころ、フランス人によってつくられたのでヨーロッ
パ風の街並みであってもふしぎではない。独立後は、国王はじめ富豪の別荘地と
なり、富裕層専用の寄宿制のイフレン大学とスポーツ選手の高地練習所等がある。
美しい町だが生活感が感じられないのは庶民に関係のない別荘地だからだろうか。
町の中心には緑豊かなヨーロッパ風の公園があり、そのまわりにしゃれたカフェ
テラスがある。
コーヒー1杯20ディルハムは庶民相場では安くない。そのカフェテラスに座っ
て目の前の煙突の上にあるコウノトリの巣をながめながら、にわか富豪を気取っ
たのはもちろんである。 |