思いつくまま、気の向くまま
  文と写真は上一朝(しゃんかずとも)


シャンせんせいのガンリキエッセー。
シャンせんせい、過酷な旅から帰還のようです、エピソードその9。





モロッコへいってきた

バスの窓から「ガイドさん」





バスの旅行には、かならず休憩時間がある。

「バスの窓から」もだいぶ走ったので、ここらで休憩をとることにした。

トイレに行く人、みやげ物屋をひやかす人、ただぶらぶらと足腰を伸ばす人、道中たっ

た3人のタバコを吸う人もいそがしい。


その間にわれらがガイドさんを紹介しよう。

写真の左に写っているのが旅行社の添乗員、Hさん。この人は添乗員としては若くなく、

どうやら人手がたりなくて管理職からかりだされたらしい。さすがにベテラン、飛行機

の乗り降りから移動まで実にそつなく引率してくれた。また、こまかなところまで目配

りがきいているのでたすかった。添乗員というものは、あまり細かく指示されるのも困

るが、放っておかれるのもまたこまる。Hさんはほどよくやってくれた。その超ベテラ

ンのHさんが大ドジをしでかしたのだが、それはいずれ書くことにしよう。

右側に写っているのは現地ガイドのマイッタさん。ガソール マイタ氏、おん年70歳

でアラブ人とベルベル人との「カフェオレ」だと言っていた。出身大学は聞かなかった

が、モロッコで中学校の先生をしたのち、ベルギー大学の教授をしていたそうで専門は

北アフリカ史。そのうえ絵も描き、言葉はアラブ語、ベルベル語はもとより、フランス

語、英語に堪能で日本語も細かないいまわし以外は不自由ないという才人である。なぜ

マイッタさんと書いたかというと、いつのことだか日本人のガイドをしたとき「ガソー

ル マイタ」と自己紹介をしたら、聞き間違えてマイッタさんと呼ばれた。その「マイ

ッタ(参った)」の意味が気に入って以来「マイッタ」と自己紹介をすることにしたと

いうユーモアたっぷりの人である。だが、Hさんは礼儀正しく「ガソールさん、ガソー

ルさん」というので、はじめのうちはガイドが二人いるのかと戸惑ってしまった。

このマイッタさんはガイドというより現地のゼネラルマネージャという形で旅行の全行

程を仕切ってくれた。各都市は、マイッタさんの下に現地のガイドがつく。海外旅行で

は、かならずその土地のガイドを使わなければならない決まりがあるときいた。これは、

ほかの国でもおなじだった。この、都市と都市の間、ふつうのモロッコを走っていると

きその土地の成り立ちから歴史、過去の災害、生活事情とメモをとる手も追いつかない

ほどの博識は、単調な景色をあきさせなかった。こうして拙い旅行記を書くことができ

るのもわれらがマイッタさんのおかげである。


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