モロッコへいってきた
メクネスでポン引き
シャンせんせーが「仕事」した店
ここメクネスは、アトラス山脈の地中海側にあるため、地味は肥えていて水も豊富な
土地なので昔から果樹園やオリーブ畑がひろがっていた。
豊かな土地というものは権力者に支配されやすい。メクネスも17世紀アラウィー朝
の王ムーレイイスマイルが支配するところとなり、数多くの城壁や門、モスクなどを
建設して豪華な王国を造ろうとしたが、王は完成を待たずに死んでしまった。その後
王の志を継いで広大な城塞都市を完成させたが、首都として栄えたのは半世紀たらず
であった。王朝がかわり首都が他の土地に移ると、ここはムーレイイスマイルの豪華
な廟と巨大な城壁や見事な門モスクなどが残る廃都となった。しかし、残されたもの
が偉大であるために、後世史跡都市としておおくの観光客が訪れるようになったのは
皮肉でもある。
35℃の炎天下に立つわれわれはというと、豪華な廟やモスクには異教徒であるため
に入れず、見上げるように巨大な門や城壁をあぜんとして眺めるよりほかにない。ガ
イド氏はわれわれの苦しみそっちのけで、熱心に城壁を案内してくれる。持っている
水も飲み干し熱中症寸前になっているとき、広い道路のむこうがわにある雑貨屋風の
店が目にはいった。そっと説明の列をぬけだして店にいってみるとみごと的中、水を
売っていた。値段を聞くと高くない。さっそく買い求めて列にもどろうとすると店主
によびとめられた。なにを言われるのかとビクッとしたが「みんなを呼んできて水を
もっと買ってくれ」ということだった。列にもどり水をのんでいると「どこで買った
んですか」と、宣伝するまでもなく声をかけられた。道路向こうの店を指さし「値段
も高くないですよ」といったが、こちらをにらむように主が立つ小さな店に行くのは
不安があるらしくだれも行かなかった。しばらくすると、渇きにガマンできなくなっ
たのか、一人、二人と道路をわたって店に行き出した。その人たちがもどってきて、
心配ないと聞くと全員が店に向かい大繁盛となった。それを見ていたメンバーの一人
が笑いながら「シャンさん、店に行って宣伝料に水を2,3本もらってきなさいよ」
と言った。「そうだ、ポン引きをしたのだからダメ元でかけあってみるか」と思った
とき、われわれの一団は歩きだした。 |