●連載
虚言・実言 文は一葉もどき
横浜が縄張りの元タウン誌ライター。
貧しさにもめげず言の葉を探求し、人呼んで“濱の一葉”。
ウソ半分、ホント半分の身辺雑記を綴ります。
もどきさん、好奇心が反感に最後は同情になりました。
又吉直樹の本
回し読みをしている友人から又吉直樹著『劇場』を借りて読んだ。
『火花』以来の2冊目である。
この作家は私の好みではないのだが、今をときめく話題のべストセラー作家への野次
馬的興味があった。(ミーハーの極み)
ところが今回は途中で投げ出したくなった。
『劇場』の主人公に感情移入ができないのだ。
正直、『火花』の方が良かった。
でてくる男や女の考えや行動することがいちいち癇にさわる。もっと何かを主張する
にもこんなにダイレクトな議論や行動ではなくもっと含みをもたせて読者にわからせ
る方法があるのではないか。
なんだかとても気負って書いている。
主人公がどんなに破天荒でも、それが根本のところで容認できたり新しい視点として
受け入れられたのなら、それは発見となって感動するのだが、そうはならなかった。
世代の違いかもしれないけど。
確かに又吉直樹の作品は、特殊な世界を書いていて材料は面白い。そして作家自身も
個性的な才能に満ちていて、語彙も豊富だし、深く掘り下げた記述は考えさせる。賞
をとってもおかしくない実力をもつ作家であることは間違いない。
次を期待しよう。
そういえば、文中にさりげなく“嫉妬”という感情について長々と書かれていた。
私はきっと今又吉直樹は多くの人の嫉妬にさらされているのだろうな、とちょっと痛
ましく思った。