さくら
「偽客」と書くとは知らなかった。
さくらといっても、お花見の桜ではない。
このごろは見なくなったが、お祭りなどの露店とは切ってもきれない間柄の御仁のこと
である。
その仕事はというと、客のふりをして商品をほめたかと思うと、その値段の安さに大げ
さに驚いてみせたりして通りすがりの人の興味をひく。いったん客がつくと、自分はこ
の商品をよくわかっている人間だ、などといいながら、買わなければ損をするというよ
うな気分にさせる。つい本職がほめるのだから間違いないだろうと買ってしまうが、家
に帰って落ち着いてみたらとんだ安物だった。実はこのお客さん、はた目には第三者に
見えるが、裏で露店の主とつるんだ偽のお客さんというわけだ。
最近そのめずらしい景色をひさしぶりに永田町でみた。
共謀罪衆院通過のときの維新の会がそれだ。日本維新の会はユニークな政策をかかげそ
れなりの支持をうけている。ところが野党だと思っていた日本維新の会は衆院本会議に
おいて自民党に協力してさっさと共謀罪を成立させてしまった。「あれ、おかし…」と
思う人は人がいいのであって、実は日本維新の会は自民党のさくらなのだ。ふだんは独
立政党として活動させておいて、いざというときには行動をともにする。こうしておけ
ば与党は単独強行採決の誹りをうけることはない。
もし、日本維新の会の支持者で裏切られたと思う人がいたら、その人はとんだ安物をつ
かまされたわけだ。商売のさくらを「偽客」というそうだが、日本維新の会は「偽党」
なのではないか。 |