5/15のしゅちょう
            文は田島薫

(目前のことしか見ることのできない人々について


人はだれでも、世界の様々な事象に対して、なんらかの解釈をしつつ対応してるんだけど、

その対応の仕方で一番分かりやすいのが、「現実的な」って解釈によるもので、これがな

かなかクセモノで、たいてい問題を起こす原因になってるのだ。

「現実的な」解釈がすべていけないわけではなく、例えば、大けがや大病をした時の痛み

止めなんかはとても助かるもんなんだけど、そんな時でも一番大事なことは、当然ダメー

ジ箇所を修復する、ってことなわけで、治療なのにそっちを忘れることはないだろうけど、

これがそれほど「自分の身に切実じゃないように感じるジャンルの問題」の時には、この

治療にあたる方を忘れ勝ちになることが多々あるのだ。

これの例を上げれば切りがない気がするんだけど、とりあえず、一番身近な「食事」につ

いて、人の命と健康を維持する重要なもののわけで、これが戦中戦後の食糧難の時なら、

それを考える余裕もなかったろうけど、余裕が出てきた現代、人々の美食に関する意欲は

各種メディアでも見聞きするんだけど、その本来の目的である栄養バランスや安全性は軽

視される、とか(美食の方が健康維持より大事だ、って人は別だけど)。

身近よりは少し遠そうな「政治」についてなら、現自民党政権がやってるような、経済成

長優先のためなら、安全を脅かされたり犠牲者が出る可能性も無視するやり方、とか。

大学のカリキュラムも実用的な理数系を拡大して用のない文科系を減らす、って考えも、

本来の人間の幸福な暮らしとはどういうもんだろうか、といった思考や研究を軽視して、

前述の短絡政策を補強するものにしかならないだろうし。

非核化は必要でそれを求めてるのにそれに応じない北朝鮮は許すことができない、などと

怒って見せる安倍首相が、同様の核武装開発やってるイスラエルのことはとがめないのは、

それが米国と仲良しの国だから、ってもし思うのなら、中国が北朝鮮をとがめない気持も

わかるはずなのに、それについては、ちっとも思い至らない模様、とか。

危険な敵国が武力威嚇してるんだからこっちも米軍と同盟や軍事力を強化して、その脅威

にそなえなくちゃいけない、って言って、相手国の立場については一切考慮せず、自国の

都合だけで危機感を煽り、本来の理想であるはずの、他国との友好と平和、という目的を

すっかり忘れながら、(自分の身には危険が及ぶ心配がないもんで)甘いこと言ってちゃ

だめだ、現実を見た政策をしなくては、などとしたり顔で言う評論家たち、とか。




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