●連載
虚言・実言 文は一葉もどき
横浜が縄張りの元タウン誌ライター。
貧しさにもめげず言の葉を探求し、人呼んで“濱の一葉”。
ウソ半分、ホント半分の身辺雑記を綴ります。
もどきさん、気分解消に勇んだお出かけでした。
おいしいもの食べよう!
木の芽どきの女は気難しい。
待ちに待った春がやってきて、桜の便りが聞かれ、スポーツの開幕が告げられ、新年度
のお稽古ごとが始まったというのに気分がいまいち。
大層な病気があるのではないけれど、だるかったり、気分がのらなかったり。
会う人ごとに弱音を吐いていると
「そうそう、私も同じ!」
「最近の天候不順についていけないのよね」
「私なんか低気圧がくると途端にダメ」
なんていうご同輩がたくさんいた。
ところが、ある太めの人が厳かに言うではないか。
「デブは伊達に太っているんじゃないのよ。おいしいものを思いっきり食べるのが一番。
食べればしあわせ溢れ、体力気力も十分になるんだから」
その一言で、辿り着いた結論。“おいしいものを食べに行こう”。
同輩主婦3人で、ヘルシーな無農薬野菜がウリの本格的フレンチレストランへ出かけた。
評判通り、彩りもきれいに盛られたオーガニック野菜のサラダ、スープ、メインの鴨肉、
フランスパン2切れ、果物とスイーツのコース料理はすべておいしかった。
ただ、ランチのせいか、安い方の値段にしたせいか、女性客を意識してか、いかにも量
が少ない。
私は朝、パン食で簡単に済ませる代わりに昼はモリモリ食べるタイプなのだ。
“思いっきり食べる”っていう部分が欠けて、なんだか、おいしかったわりには物足り
ない。
店内もゆったりしているわりには落ち着かない。
上品だけどしっくりこない。
というわけで、いろいろ文句をつけて、相変わらず木の芽どきの女は気難しい。