槍の子
ことしは筍が高い。
出はじめのころは一本1000円もした。
筍もとうとう高級食材になったのかとあきれていたら、不作なのだそうだ。
竹は60〜120年周期で花を咲かせ、枯れるという性質をもっている。開花のせいだと思っ
ていたら、産地に雨が少なかったので生えてこない、というシンプルな原因だった。
電車で30分ほどの街にある、毎度しょう油を買いに行くよろず屋に筍があった。値段は昨年
並みだったのですこし小ぶりではあったが買いもとめた。金を払いながらおかみさんに「こと
しは筍が高いね」と言ったら「雨がふらなかったからね。お得意さんに、まだかまだかといわ
れてこまっているのよ。ようやく降ったから出せるようになった」というので、「あ、雨後の
タケノコというからね」といったらキョトンとされてしまった。それは、竹になったとき太め
の物干し竿になるくらいのもので、スーパーの品とちがって正真正銘の朝どりであったからえ
ぐみもなくおいしかった。
太めの物干し竿と書いて思いだした。この間の戦争末期、太めならぬ細めの物干し竿で竹槍を
つくらされた。これで上陸してくる米兵を突き刺すのだ。鬼畜米英であった。幼少期であった
が疎開先ではこのようなことはなかったようだ。大人からも聞かされたことがないので都会だ
けの悲劇?喜劇?であったのだろう。
人は狂いだすとなにをしでかすかわからない。北朝鮮問題がそうである。北朝鮮の来し方を決
していいとは言わないが、いまの米朝の関係はどっちもどっちという状態になってきた。
現実味に欠けるとは言え、名指しでミサイルを撃ち込むといわれればアメリカはだまっていら
れない。アメリカの国際戦略にそって国是をあらためなければ経済封鎖だといわれれば北朝鮮
だってだまってはいない。日本だって、やりたい放題やったあげくに経済封鎖をくらって戦争
に突入したのだからわからないはずはない。
米朝ともに武力をちらつかせるようになってしまっては、まわりの国は手の出しようがない。
狂いはじめた米朝両国が竹槍を振りまわすまえに、なんとか槍の子の状態でことを納めてくれ
なければ、まわりの国はいいめいわくである。 |