思いつくまま、気の向くまま
  文と写真は上一朝(しゃんかずとも)


シャンせんせいのガンリキエッセー。
シャンせんせい、春の庭を次々楽しんだようです。





花盗人




冬から春に変わるころ、暖かい日がつづいたかと思うと寒い日がある。人はこのようなとき、

「春先は三寒四温だから…」と自分をなぐさめる。


この、寒よりもひとつ多い温の日は散歩をしたくなる。

ひとくちに散歩といっても、日を追って自然がなくなってきたので道をえらぶのに苦労する。

宅地化の波の中で、散歩をするのに適しているのは一軒の家が60〜80坪の住宅団地である。

敷地がそれほど広くないので塀は作らない。といって外から庭が丸見えなので競うように庭づ

くりをしている。手入れの良い庭木の家、草花の家、なかには庭いっぱいにぶどう棚を作って

いる家もあって目を楽しませてくれる。しかし、男が一人、手ぶらで住宅街を歩きまわると人

目をひく。空き巣の下見と思われてはかなわない。そういうときに便利なのがカメラである。

カメラ片手に散歩をしていると、写真が目的だろうと安心してくれるばかりか、こうして怪し

まれずに花盗人になれるのだ。


戻る