●連載
虚言・実言         文は一葉もどき


横浜が縄張りの元タウン誌ライター。
貧しさにもめげず言の葉を探求し、人呼んで“濱の一葉”。
ウソ半分、ホント半分の身辺雑記を綴ります。
もどきさんが買って来てもらった高性能小型機器のてん末。



中国製“多機能移動音響機器”を買う


なにを隠そう私はながら族である。

台所仕事をしながらラジオを、絵を描きながら音楽を、針仕事しながらテレビを、お風

呂に入りながら音楽を。とにかく二つのことを同時進行できると満足なのである。

つい最近、台所で使っていた古いCDラジカセが壊れた。

一つ買わなければ思っていた矢先に太極拳の先生が上海へ一時帰国することになった。

私は、前々から先生がレッスンの時に使っている音響機器に目を付けていたので、よし、

同じものを買ってきてもらおう、と頼んだのだ。

中国製品といえば粗悪品というイメージがあるが、いまや技術向上で中国は工業大国、

使いやすさと安さで優秀なのだと聞く。

大きさは手のひらサイズ、音もまあまあと実証済み。

「電源は充電式ですね」と私。

「オッケー」と先生。  

「ラジオが聞けて、パソコンにつなげばユーチューブから音楽が取り込めるんですね」

「オッケー。しかも3ギガバイトよ」

「操作がわからなかったら先生教えてくださいね」

「オッケー、何も問題ないよ」

先生からたくさんの「オッケー」をもらって安心して買うことにした。

やがて、先生は上海から戻り、私の頼んだ中国製ウオークマンもどきが手渡された。

200元、つまり金3500円也。安っ!

開けて取扱説明書を見たが、案の定中国語でちんぷんかんである。でも中国人の先生が

身近にいるからと大船に乗った気持ちだ。

おまけに先生の息子さんが、日本のおばあさんは曲の入れ方がわからないだろうと気を

利かして100曲も入れといたという。

家に帰って早速聞いてみた。

最初の部分は曲名は分からないながら癒し系の曲で気に入り、シメシメと思ったのだが、

そのうち中ほどから、『嵐』『浜崎あゆみ』『SMAP』『サザンオールスターズ』『宇

多田ヒカル』などJポップの歌に変わった。ほとんど馴染みのないラブソングばかりで

途方に暮れる。

好みも聞かずに勝手に曲を入れてくれたのは、ちょっと有難迷惑。しかも、先生はあま

り操作を知らず、息子さん経由で聞くという始末なのだ。

もう一つ想定外はラジオがFMのみだったこと。聞くと中国ではAMは入らないからとの

こと。

ま、いいか、と当分若者が入れてくれたいまどきの曲を楽しもう。

そういえば、中国人が日本の電化製品を爆買いしていくが、果たしてスムーズに使いこ

なしているのだろうか。


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