●連載
虚言・実言 文は一葉もどき
横浜が縄張りの元タウン誌ライター。
貧しさにもめげず言の葉を探求し、人呼んで“濱の一葉”。
ウソ半分、ホント半分の身辺雑記を綴ります。
もどきさん、ふいの再会になにかを感じました。
ママ友
混みあう元旦をはずして近所の八幡様へ初詣に出かけた途中でのこと。前方から帽子をか
ぶり、サングラスをした女性が颯爽と歩いてきた。
はじめ、誰だか分らなかったが、近づくと子供の幼稚園時代のママ友だった。新年の挨拶
をしてから、
「八幡様へ?」
と私が聞くと、
「ううん、散歩。私毎日1万歩歩いているの」
という。
「わー、毎日、10000歩!」
私はオーム返しにいって心底驚いた。運動不足の私とはエライ違いだ。それからしばらく
健康談義をしたあと、昔のママ友のうわさをした。
〇〇さんは乳がんなの、××さんはご両親の介護なの、とそれぞれの事情を教えてくれる。
ずっと交流を続けていたらしい。
私は途中仕事を持ったので、ママ友とはぷっつりきれた。正直、子供を介しての友達なん
てかりそめなのではないかと思っていたし、いい人だと思っても本当のところはわからな
いから。狭いグループでの気遣いはまっぴらだと思っていた。
目の前のママ友も
「あれから、友達の環境はがらりと変わったわ。私もいろいろあってね。これからは歳と
って子供には世話になれないからこうして歩いて健康維持しているの」
と、ちょっと寂しそうに笑う。
私は何があったか、なんて訊かなかった。言いたければ自分の口から言うだろう。頑張っ
て、なんて半端な言葉も使えない。皆、それぞれ何かを抱えている年代だし、誰だって年
の数だけため息をついているものだ。
それでも、女にとって、こうしてただの「こんにちは」だけでなく、よもやま話に話を咲
くのは、冬の冷たい空気の中でもほっこりするひとときなのだ。
同じ街で同じ時代を過ごし共通の懐かしい思いを語れる友達がいることを小さく感謝した。