いまよう久米仙人
小銭を入れるから小銭入れなのに、買い物のつり銭で小銭入れがふくらむのはいやだ。
スーパーで買い物をすませ、さてどのレジが早いかとみまわすと二人いるレジが目につ
いた。ふたり掛かりなら早いだろうとそこに並ぶと、前の客がビールを2ケースカート
に乗せていた。それを見たレジのオバサンは「こちらへどうぞ」とカートごととなりの
レジに移ってしまって、あとに残されたのは新米らしいわかい女の子。
前に立つと案の定「研修中」のバッジをつけている。これはしまった手が遅いぞと顔を
みるとこれがなんともかわいい顔をしている。歳のころは高校生かうぶな大学生という
ところ。心配しながら手もとをみていると、マニュアルどおりに商品を分類しながらバ
ーコードを読み取っている。ただおかしなことに、生姜だけカゴの外に置いていた。ど
うするのだろうと見ていると、最後に「これ、○○しょうが、ですね」と生姜を手にと
って聞いてきた。とっさのことで○○が聞き取れなかったので聞き返すと「これ、たに
なかしょうが、ですね」…
一瞬なにをいっているのかわからなかった。ふと考えてレジのタッチパネルを見ると
「谷中しょうが」となっている。わらってはかわいそうなので「これ、や な か しょう
が」とゆっくりいうと恥ずかしそうに顔をあからめた。
支払いは2,216円。硬貨がふえるといやなので、10,216円を出したつもりな
のだが100円玉がもどってきた。おかしいなと思って小銭入れをみると100円と
500円をまちがえて10、616円わたしたようだ。久米のおじさん、かわいい子に
見惚れて小銭をふやしてしまった。 |