●連載
虚言・実言 文は一葉もどき
横浜が縄張りの元タウン誌ライター。
貧しさにもめげず言の葉を探求し、人呼んで“濱の一葉”。
ウソ半分、ホント半分の身辺雑記を綴ります。
もどきさん、やっぱり型は大事なのだ、って確認しました。
型にはまる
太極拳の先生が1カ月の夏休みをとって上海へ里帰りされた。
さてその間どうしようということになり、生徒全員けなげにもひと月もやらなければ
忘れるし、体もなまってしまうから自主トレしようということに相談がまとまった。
いつも音楽に合わせて先生の動作を見ながらするのだが、いざやってみると、手本が
ないので次の動作を忘れたり、皆バラバラだったり見られたものではない。いかにう
ろ覚えであるかがわかった。
太極拳は型である。大人になって覚える型はなかなか身につかない。型は反復から生
まれるのだが、大人になると理屈が先行するので反復学習は不得意になっている。例
えば歌舞伎役者。なぜあれほど世襲制にこだわるのかは親から子へと小さいころから
芸を叩き込む必要があるからだとよく理解できる。
また型は生きていくうえでも必要である。子供の頃から身に着いた生活習慣は型であ
り、生きていくうえで効率的に楽に過ごせるし、また踊り、茶道、花道などのお稽古
事も型があることで物事は普及し洗練されていく。
とはいっても型がすべてかというと勿論違う。「型にはまっている」というと否定的
な表現であり、「型破りな人生」というと人はちょっと称賛の目で見る。
それは型にはまることは流れに逆らわず楽でいられるので、人はその「楽」の部分を
怠けと捉え否定するのだろう。或いは「平凡」でつまらないと思うのだろう。
だが人はそんなに厳しく生きなければならないのだろうか。
人の生き方はそれぞれだが、知らず知らずにその人らしい型をつくりそれに沿って生
きていき、あるときこれもまた知らず知らずに型を破っているものだ。私はこの微妙
に型からこぼれるものにも注目していきたいと思う。