思いつくまま、気の向くまま
  文と写真は上一朝(しゃんかずとも)


シャンせんせいのガンリキエッセー。
シャンせんせい、失敗の歴史に今の日本の首相が沿ってないか、と。





意志の勝利




連休の一日、近所のホームセンターで廉価版DVDのかごのなかに観たかった映画をみ

つけた。

それは、「最低の内容と最高の映像美」、といわれたドイツ映画「Triumph des willens」

邦題「意志の勝利」である。

1934年ニュルンベルグでおこなわれたナチスの第6回全国大会の記録映画で、監督はい

うまでもないレニ・リーフェンシュタール。1935年ドイツ国内で公開されたプロパガン

ダ映画であるが映像の見事さに気をうばわれプロパガンダ映画のもつ胡散臭さをあまり

感じない。もちろん枢軸国である日本でも1942年に公開されている。

モンタージュ技法を巧みにつかった映画の評判は前々から知っていたが現物におめにか

かることはなかった。同じ監督のベルリンオリンピックの映画「民族の祭典」はあるの

に、この「意志の勝利」はナチスの関係か国内の正規版発売はおそかった。もちろんド

イツではいまだに上映禁止だそうだ。

映画の内容はとくべつ書くこともないが、評判どおりの映像美にひきこまれてしまった。

映像が美しいだけそこに写しだされた人々の運命を気づかう…。クローズアップで写し

だされる少年の、青年の、市民の10年後を考えるとひとごとではなくなった。撮影さ

れたのが1934年。その10年後のドイツはどうなっていたか。この映画に写しだされた人

々の何人が生き残れたか。


われわれのまえにある政治状況をみると、この映画はいまの日本を写しているのかもし

れない。

映画の中の演説の言葉、「われわれには、将来の国家の理想像がある」「われわれは将

来国民が従順であるように望む。だから諸君は自らを従順であるように訓練しなくては

ならない」が「政府にたてつくテレビ局の電波は止める」とうそぶく現政府高官の発言

にかさなるからおそろしい。また、「われわれにとって最高の指導者は最高の裁判官で

ある。正義の原則はわれらの総統にある」という司法大臣の演説にある総統の2字を

「安倍首相」におきかえると、憲法順守を説く多くの学者の反対意見を無視した新安保

法成立の原点そのものになる。

この映画の中で、ナチスに歓呼をおくったドイツ国民の轍をふまないようにするには、

明日の日本をどの様な国にするか、国民は明確な「意思」をあらわさなければいけない

ことをこの映画から感じた。


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