●連載
虚言・実言         文は一葉もどき


横浜が縄張りの元タウン誌ライター。
貧しさにもめげず言の葉を探求し、人呼んで“濱の一葉”。
ウソ半分、ホント半分の身辺雑記を綴ります。
もどきさんが見た世間の人々の諸事情(?)シリーズの8。



世間話シリーズ

顔の話


以前、女性のポートレートを得意とするカメラマンのE氏がこんなことを言っていた。

「女はよう、美しくなる時期が三回あるのさ」

「へえ〜、どんなとき?」

「一回目は性に目覚めた思春期で、言ってみれば、命のほとばしるような美しさ、二回

目は恋をしたときのひたむきな輝くばかりの美しさ、で、三回目は歳とって、その生き

様が刻まれた揺るぎない美しさだ」

「でも、女性は化粧によっていくらでも顔を美しくみせることができるじゃない。いく

らでも化けられるわ」

「いや、隠そうと思っても内面は滲み出てしまうもんだ。大体化粧の仕方からしてその

人らしさがでてしまうからね」

そしてE氏はさらに言う。

「女は美しくなると凄みのようなものが出るんだよなあ」

「ふ〜ん」

あ、そういえば、思い当たる。

「瀬戸の花嫁」を歌っていた可憐な小柳ルミ子が「お久しぶりね」を歌う頃にはすっか

りきれいになって、ちょっと凄みのある顔になったし、「こんにちは、赤ちゃん」を歌

っていた梓みちよなんかシャンソンを歌うようになったら、別人のように凄みのある美

しさになっていたっけ。

「じゃあ、男はどうなのよ」

「男は断然渋さだね」

とE氏はいう。

やっぱりと再び思い当たった。

昔の歌手だけど、ハンバーグというあだ名の菅原洋一というタンゴ歌手がいた。あだ名

どおり、ハンバーグような丸い輪郭で目は細く鼻は低かったが、どうだろう。歳をとっ

たら渋さがでてとても素敵な顔になった。

凄みといい、渋さといい、どちらも自分の生き方に自信を持った人の特徴だ。

E氏はさらに一言。

「そのうち、気心が知れてくれば顔の美醜なんか関係なくみんないい顔に見えるように

なるんだよね」

うーん、そんなもんかね〜


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