2/1のねこさん       文は田島薫



茶とらが行く


きのうの午後、家人と繁華街の方へ出かける途中、稲荷神社となりの家の狭い庭をのぞ

くとねこさんたちはひとりもいなかったんで、なんだ、って歩きだそうとした方向に、

時々現れてねこさんたちにけんか売っておばさんに追い払われてる茶とらが先に歩いて

いた。われわれはゆっくり歩調を合わせながらついて行き、ちょっちょっ、って、舌で

呼んでみたけど、前向いたままどんどん歩いて行き、下り坂の手前の家の玄関横に入っ

て初めてこっちをふり返り、われわれの声かけに、ちょっとの時間耳と目を貸してから、

ひょい、ってわきのすき間に入って行ってしまった。


あいつらのごはんの時間だったら、ちょっと食わしてもらお〜、って思ったんだけど、

まだなのか、じゃ、時間まで待たせてもらお〜か、ってわけにゃいかないんだよな、

以前それやってたら、おばさんにどなられちゃったから、だから、ぼくは立ち止まっ

ちゃいけない、つー身の上なんだね、きっと、だから、こーやってどんどん歩くんだ、

どんどん歩いて歩き続けるんだね、ほら、後ろからだれかが呼んでるんだけど、なん

だい?なんつって、ふり返ってろくな目にあったためしはないんだかんね、きしょー、

ほら、こーやって、すぐに逃げられる場所に来て、やっと、おもむろにふり返って、

なんでしょーか、っつってもね、ほらね、やっぱりただあやしー2人組がこっち見て

笑ってるだけでしょ〜が、ね、ね、きしょー。


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