12/5のしゅちょう 文は田島薫
(人生の短さ、について)
年末になればいつでもだれでも感じることなんだろうと思うんだけど、なんて1年は短いん
だろう、って、これが10回で10年、思い返せば10年前だってついこのあいだ、って感じで。
そうやって、人はいつのまにか年老いて気がつくともう人生は終わり、ってわけなのだ。
まあ、これは、だからどうした、ってような実に凡庸な思いを言ってるに過ぎないんだし、
私だってそう感じるのはけっこう若い時からだったんだけど、年を重ねるごとにそれが加速
してる感じなもんで、それの切実さをあらためて言っておきたい気分なのだ。
それを、聞いて、うるせーな、って思った人はもうここで読むのをやめてもらってもいいん
で、この先もうちょっと読んでもらっても、たいしたことは書いてないことは事実で。
で、気をとりなおして、私がそれの切実さを感じるのは、近年の両親や親族の死を身近に経
験したせいも大きいんだけど、例えば、私の両親も死ぬ間近の時期さえ、自分なりに体のこ
とを考え、たとえば、おやじなどは、発ガン性があるって思い込んだあらゆる食品のコゲを
ていねいに取りのぞいてたし、おふくろの方は何年か先の分まで趣味の水墨や手芸の材料を
買いこんでたし、先日亡くなったいとこは、やっぱり趣味の革細工用の皮を買いこんだり、
長くきれいに使えるように新しい目覚まし時計にラップをかけたりしてた。
重病を経験してそれの危機感の中でがんばってる人は違うと思うんだけど、たいていの人は
自分が死ぬ日はずっと先だ、って思って油断してるもんだから、傍からはけっこう元気そう
に見られてた人の方が先に突然のように死ぬ、ってことも起きるのだ。
まあ、それでもなんとか問題もなく寿命をまっとうしたとして、ふつうなら今60才の人の残
された時間は長くても30年か20年、それよりずっと短いこともありうるわけで。
30年ならまだしも、20年か10年だと、長い、って考えることもできるんだけど、じゃ、これ
までの10年20年はどんな感じで過ぎたか考えてみたとしたら、長かったと思う人もあるかも
しれないけど、たいていは、あっと言う間だ、ってことも多いわけで。
けっきょく、だから、なんなんだ、ってことに戻るわけで、きょうの日を人生最後の日と思
って過ごせ、ってだれかが言ってたのが至言なのだ、多分。
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