5/18のねこさん       文は田島薫



ねこさんが置き物になった


きのうの汗ばむ午後、池のある公園まで散歩行ってみっかって家人と歩いてると、

路地わきの建物がコの字状になったスペースにとらねこさんが寝転んで、足の毛

づくろいをしてたんで、そばに立って、ふたりで、よ、って手上げたり声かけた

りしてると、こっちに気づいたねこさん、足を宙に上げたまま固まった。

しばらく、ふたりで同じことやってたんだけど、ねこさんは同じ姿勢で固まった

まま身動きしない。われわれがちょっとそばへ近づくふりをしかかった時、ねこ

さんの方がやおら立ち上がって、こっちへ歩いて来たんで、お、来るか、って思

う間もなくそばを通り過ぎて、あっちへ行ってしまったんで、われわれもそっち

へ近づくんだけど、間合いは保ったままどっかへ行っちゃった。


いやいや、きょーはあっちくてまいったね〜、でもここ、ちょーど日陰でいかっ

たいかった、ゆっくり、こ〜やって毛をつくろってかっくよくして、ガールハン

トに備えなくちゃね、いやいや、おちつくね〜、っつってるそばから、だれかが

ぼくのそば立ってこっち見てなんか言ってるね〜、ここはヘタに動くとやばいっ、

こ〜やって息止めてれば、あ、なんだねこの置き物か〜、って帰っちゃうかもし

んないから、そ〜しよ〜、んん、まだかな〜、まだ帰んないか〜? ぼくは置き

物ですよ〜、見ててもつまんないですよ〜、あり?帰んないね〜、え?こっち来

っか?置き物持って帰る気か〜? そりゃやばいっ、うそうそ、置き物じゃない

んだよ〜、ほら、歩けんだよ〜、でも、つかまんのは、やだなんだよ〜、って。


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