ねこさんが置き物になった
きのうの汗ばむ午後、池のある公園まで散歩行ってみっかって家人と歩いてると、
路地わきの建物がコの字状になったスペースにとらねこさんが寝転んで、足の毛
づくろいをしてたんで、そばに立って、ふたりで、よ、って手上げたり声かけた
りしてると、こっちに気づいたねこさん、足を宙に上げたまま固まった。
しばらく、ふたりで同じことやってたんだけど、ねこさんは同じ姿勢で固まった
まま身動きしない。われわれがちょっとそばへ近づくふりをしかかった時、ねこ
さんの方がやおら立ち上がって、こっちへ歩いて来たんで、お、来るか、って思
う間もなくそばを通り過ぎて、あっちへ行ってしまったんで、われわれもそっち
へ近づくんだけど、間合いは保ったままどっかへ行っちゃった。
いやいや、きょーはあっちくてまいったね〜、でもここ、ちょーど日陰でいかっ
たいかった、ゆっくり、こ〜やって毛をつくろってかっくよくして、ガールハン
トに備えなくちゃね、いやいや、おちつくね〜、っつってるそばから、だれかが
ぼくのそば立ってこっち見てなんか言ってるね〜、ここはヘタに動くとやばいっ、
こ〜やって息止めてれば、あ、なんだねこの置き物か〜、って帰っちゃうかもし
んないから、そ〜しよ〜、んん、まだかな〜、まだ帰んないか〜? ぼくは置き
物ですよ〜、見ててもつまんないですよ〜、あり?帰んないね〜、え?こっち来
っか?置き物持って帰る気か〜? そりゃやばいっ、うそうそ、置き物じゃない
んだよ〜、ほら、歩けんだよ〜、でも、つかまんのは、やだなんだよ〜、って。 |